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「今、自分たちにできること!」を多様な支援で復興目指す“被災地支援チーム TEAM JAPAN”

被災地支援団体 TEAM JAPAN

更新日:2025年5月9日

「今、自分たちにできること!」を

 チーム・ジャパンは「今、自分たちにできること!」を合言葉に、支援物資の配布や被災家屋の片付け、泥出しといった支援に加え、祭りの手伝いやお茶会、イベントの開催や地域交流の促進など、被災地のさまざまな困りごとに取り組んでいます。2024年1月1日の地震から1年4カ月が経ちましたが、求めるられる支援内容は時間とともに変わりながらも、今でもまだまだ多くの要望が寄せられています。   僕たちの活動を見ていた方が「こんなことを頼んでいいのかな」と、戸惑いながら遠慮がちに声を掛けてくることがよくあります。被災した方々は、どのくらいの困りごとなら頼んでよいものか分からないのだと思います。役場に連絡したら支援の対象外と言われたとか、こんなことを頼んだら申し訳ないとか考えてしまっています。

さまざまなニーズに応えて輪を広げる

資格を持ったメンバーが被災した人たちの疲れや緊張をほぐす(2024年11月、志賀町)

 仮設住宅への引っ越しの手伝いや、避難所から自宅に戻った際の家の中の整理など、ニーズはまだまだあります。  さらに、復興には家屋や家財の整理などのハード面だけではなく、被災した方の心のケアも欠かせません。  リラクゼーションカフェやヨガ、ペーパークラフトの体験会などを開き、交流することによって気持ちを和らげていきたいと考えています。これらの交流を通じて住民の方々が活動を手伝ってくれるようになりました。より輪が広がっていくようにしたいです。

復興への3つのポイント

 僕個人の意見ですが、復興のひと段落は仮設住宅に住む人がいなくなったときだと考えています。現在のところ、仮設住宅から自宅を再建して移った人は数えるほどです。  東日本大震災では福島県を除き、約10年で仮設住宅が解消となりました。能登も同じくらいかかるのではないかと思っています。東日本大震災や熊本地震、広島豪雨災害などでの復興事例を僕なりに分析した結果、次の3つが復興へのポイントになると考えています。 1. 復興への明確なビジョン 2. リーダーシップを発揮できる人材 3. 住民、行政、ボランティアのチームワーク  チーム・ジャパンは、これらを支えることが使命だと考えています。

僕らは何度でも助ける

2024年9月の奥能登豪雨で被災した輪島市内の家屋の泥出しに励む

 能登では地震だけでなく、豪雨災害も起きました。地震の復旧支援の活動が進み、復興への機運が出始めてきたころでした。  「もう心が折れた」。打ちひしがれた住民の方々にかける言葉がありませんでした。僕たちも同じ思いでしたが、被災された方の比ではありません。 「僕らは何度でも助ける」。  そう切り替えて、炊き出しや、床下・床上の泥出しをすぐに始めました。必ず復興できると信じています。

誰でも参加できるボランティア

 支援活動は泥出しや家電の運び出しなどといった手作業が多くなりがちですが、肉体労働や力仕事ばかりではありません。  珠洲市や志賀町富来(しかまち・とぎ)、穴水町の夏祭りでは神輿を担いだり、屋台を出したりして盛り上げました。チーム・ジャパンの一員として活動しているNPOのなかにはフリースクールを運営している団体もあり、このフリースクールに通っている子どもたちも活動に参加しています。  子どもや年配の方でもボランティアとして参加できる活動内容もたくさんあるのです。

お祭りのスタッフとして子どもたちを盛り上げるメンバーたち(2024年11月、内灘町)

「本気のありがとう」が人を変える

 ボランティアに参加した子どもたちは、活動を機にめちゃくちゃ変わります。家では家事を手伝うこともなかった子が食器を洗ったり、不登校の日々から脱け出せたり。おどおどしながらも慣れない作業を終え、被災した方々から「ありがとう」と感謝の言葉をかけられると、愛のスイッチが入ったように変わるのです。  僕はこれまで接客の仕事をしていて、「ありがとう」と言われることは日常的でした。でも、違うのです。サービスに対する労いの言葉ではなく、心からの感謝を受けたような、今まで感じたことのない気持ちでした。  僕のボランティア活動は、30歳を過ぎてから能登で参加したのが初めての経験だったので、子どもたちの気持ちがよく分かります。 「本気のありがとう」は人を変えます。こんな自分が誰かの役に立てたということが実感できるのです。

新たなニーズに応えるためには、まだまだ人手が必要。あなたの手を貸してください

各方面に配布するイベントチラシをチーム・ジャパンの拠点まで取りに来てくれた志賀町富来地区の区長さん(右)と現地リーダーの佐々木さん(2025年4月、羽咋市)

 ボランティアのニーズは多岐にわたり、僕たちが主催する交流イベントにも人手が足りていません。春になり、夏に向けて農業ボランティアの要請も増えてきました。春休みやゴールデンウイークといった連休などには40人近く集まりますが、平日は数人ということも多いです。  僕らの活動を知ってくれた住民の方が作業を手伝ってくれたり、イベントのチラシを配ってくれたり、行政とのパイプ役をやってくれることもあります。その一方で、行政が住民から受け付けるボランティア要請の窓口は、生活再建が進んできたとして今後徐々に規模の縮小や閉鎖の方針が報じられています。  復興への道はまだまだです。チーム・ジャパンは能登の人たちに寄り添って支えていきます。資格やスキルがなくても何も問題ありません。農作業や夏祭りの手伝いなど、人手が多ければ多いほど作業がはかどるし、にぎやかになります。ぜひ手を貸してください。  また、能登半島でボランティアしながら、さまざまなプログラムを体験する合宿企画も計画していきます。

“被災地支援団体 TEAM JAPAN”について

 チーム・ジャパンは令和6年能登半島地震の支援をきっかけに、NPO法人「OHANA」、「MAKE HAPPY」、「えん」、「HAPPY NEW EARTH」が合同で立ち上げた被災地支援チームです。各団体の活動内容や活動拠点はそれぞれ違いますが、発災翌日に「えん」の関係者が営んでいた羽咋市内の元宿泊施設に4団体の代表が集まり、「今、自分たちにできること!」を合言葉に一致団結し、能登の各地で支援活動を続けています。  羽咋市の拠点には全国からボランティアがやって来ます。多い日には40人ぐらいが集まり、さまざまな支援活動を行っています。発災直後は支援物資を届けたり、炊き出しをしたり、被災した家の中の整理などに汗を流しました。避難所ではヘアカットやハンドマッサージをしたり、エコノミー症候群の予防として体操を指導したり、夏祭りの手伝いなど活動は多岐にわたります。また、能登半島でボランティアをしながら、さまざまなプログラムを体験する合宿企画も計画していきます。  チーム・ジャパンは、いわば初心者向けのボランティア団体です。社会人や学生はもちろん、お子さんを連れたご家族や70代の方など老若男女、誰でも参加できます。合言葉のとおり、それぞれが「今、自分たちにできること!」に取り組んでいます。

羽咋市の拠点で「NOTO NOT ALONE」のメッセージボードを掲げる佐々木さん(左)とオーストラリアから参加している長期メンバーの河辺 輝(かわべ・てる)さん 

事業者プロフィール

被災地支援団体 TEAM JAPAN

代表者:現地リーダー 佐々木一人 所在地:石川県羽咋市滝町レ99-80

取材後記

 能登半島には2度訪れたことがあります。その能登で地震が起き、ボランティアに行こうかと考えましたが、ネットで得た情報や、発災直後に出されていた石川県からの自粛要請をもとに判断し、すぐの現地入りは断念しました。  被災地支援団体 TEAM JAPANの現地リーダーを務める佐々木さんは、能登半島地震が起きる前は埼玉県に住んでおり、能登に来るまでボランティア未経験だったそうです。発災5日後に友人や有志らと能登に駆けつけたと聞き、当時の状況を教えてもらいました。そのタイミングで現地入りすることへの非難を承知で、受け入れられなかったら引き返す覚悟で能登に向かったそうです。  1月6日に飲料水を珠洲市に届け、市内で支援活動を行い、その日は七尾市の支援団体の拠点に泊まり、翌々日には被災地支援団体 TEAM JAPANに合流したとのこと。道路の損傷が激しく、移動は命がけだったが、被災地ではとても感謝されたと話してくれました。  まさに百聞は一見にしかず。あれこれ考えるより感じて動くことの大切さを教えてもらいました。

神野泰司(じんの・やすし、フリーライター・行政書士)

 地域情報紙の発行に携わっていたときに東日本大震災が起こり、ボランティア団体をはじめ消防団や自衛隊などの支援活動を取材しました。ですが、伝えることが仕事とはいえ、後ろめたさを感じていました。2018年にフリーとなり、翌年に行政書士の資格も取得して開業。西日本豪雨で被災した広島県呉市でのボランティアを機に、微力ながら災害支援活動を続けています。 日本記者クラブ個人会員・茨城県行政書士会所属

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