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私たちが見たい未来の地域を作り上げるために“木ノ浦ビレッジ”は「とにかく先に進みたい」

ザアグラリアンテーブル合同会社

更新日:2025年5月7日

私たちが見たい未来の地域

 木ノ浦ビレッジは、最北端である珠洲市折戸(おりと)町の木ノ浦海岸沿いにある宿泊体験施設です。のと里山空港から車で約1時間という秘境感もある立地で、お客様には美しい海の眺めとともに「時空が違う世界」を味わっていただけます。

木ノ浦ビレッジのまわりには緑がいっぱいです。写真の右側には施設とそれに続くように木ノ浦海岸が広がります。左側に見える道をずっとまっすぐいくと、映画「さいはてにて」のロケ地となった、木ノ浦海域公園があります(2025年4月撮影)

 そのような土地柄なので、震災発生直後には主要道路が通行できなくなり、木ノ浦地区は孤立状態に。震災後、木ノ浦ビレッジは約50名の地域住民やお客様の避難所としての役割を担うことになりました。同じ地域の住民とは言え、約50名の共同生活はトラブルも起こります。その度に落ち込みましたが、それ以上に、地域の方々に救われたと思うことがたくさんありました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。  この経験を経て木ノ浦ビレッジが、「地域住民の心の拠り所となる居場所でありたい」と強く思うようになりました。具体的には、木ノ浦ビレッジが関係人口(観光客、支援者など)を受け入れ、そこに地域住民が加わって、新たなつながりやコミュニティを形成していく、ハブ的役割を担いたいと考えています。  良くも悪くも、震災を経てこれまでの日常が大きく変化しました。経験を得た今であれば、これまでの地域社会の枠組みにとらわれない、より良い新しい地域社会の枠組みを、作り上げることができると思います。  この取り組みの先には、今この地域で暮らしている住民と、この先ココに住む人々が、自然とともに豊かな生活を送り続けられる状態、支え合いを続けられる状態を作り上げることができると考えています。  それが、私たちが見たい未来の地域です。

私たちの復興に向けて、とにかく先へ

 目標達成に向けて、まずは観光客の宿泊を増やしたいと思っています。  木ノ浦ビレッジは、震災発生後の2024年3月には一部で営業を再開して、復旧関係の事業者の方々を受け入れました。早期に営業を再開できたのは、共に働くスタッフが、避難所生活を送る大変ななかで、快く協力してくれたおかげです。現在も、お客様の多くが、復旧関係の事業者の方々ですが、2025年の夏頃から観光客の受け入れを再開するために、準備を進めています。

木ノ浦ビレッジの施設内。手前から木目調で落ち着いた色のコテージが並び、奥には管理棟と研修棟が並んでいます(2025年4月撮影)

 以前にもご利用いただいたリピーターのお客様から問い合わせが入り始めているので、まずは、その方々との関係性を維持していきたいと考えています。  また、震災を機に奥能登のことを知り、興味を持ってくださった方々もたくさんいらっしゃいます。そのような方々に、ぜひ足を運んでいただき、木ノ浦の自然や人の温かさを体験してもらって、また来たいと思っていただけるようにしていきたいです。  現状、まだ観光客の足が木ノ浦まで向いていないと思います。まずは、観光客の利用を増やすことが私たちにとっての復興だと思っています。  とにかく先に進みたいです。

管理棟内に設置された、お客様からのたくさんのメッセージ(2025年4月撮影)

 共に働くスタッフには、更に忙しくなることで負担をかけるとは思いますが、観光客の増加は働くモチベーションにつながると言ってくれています。  ぜひたくさんの方々に足を運んでいただきたいです。

地域の未来のために、右腕となる協力者を求む

 木ノ浦ビレッジが、「地域住民の心の拠り所となる居場所」となるために、まずは、会社として地域にどの程度貢献できるのかを考えていかなければならないと思っています。例えば、地域の大人も子供も楽しめるような空間とは? 文化をつないでいくとは? 人口減少に対応するには? などについて、どのような貢献ができるのか、考えるということです。  なお、継続的に地域に対する社会貢献活動として、「Project BEACH」や「エコシボ」の提供などにも取り組んでいます。

木ノ浦ビレッジが取り組む社会貢献活動(出典:木ノ浦ビレッジWEBサイト)

・Project BEACH(写真左):宿泊されるお客様が拾ってくださった木ノ浦海岸の海洋ゴミ1袋と、ドリンク1杯を交換しています。 エコシボ(写真右):環境に配慮し、3ヶ月で土に還る天然素材100%の布を使用した特別なおしぼりをカフェ等で提供しています。  しかしながら、木ノ浦ビレッジとしては、これらの取り組みに対して、利益を生み出せない限り、継続し続けることはできません。それをどのようにやっていくかも、課題の1つだと思っています。  とにかく課題がたくさんあることは認識しており、優先順位をつけながら、1つ1つ乗り越えていくしかありません。しかしながら、ただでさえ人手不足の状態で運営をしているため、木ノ浦ビレッジの日常の業務が忙しく、目の前のことに追われてしまって、どうしてもやりたいことが後回しになっています。  私たちが見たい、未来の地域の実現に向けて、課題の整理や優先順位づけを一緒に考えながら事業に取り組める、右腕のような協力者を求めています。

より豊かな社会の実現に向けて

 木ノ浦ビレッジを運営する、ザアグラリアンテーブル合同会社は、2021年11月に、私・山口侑香(やまぐち・ゆか)が先代から代表を引き継ぎました。珠洲市から指定管理者制度による指定業者として運営を行っています。  代表就任以来、「人に重きをおくことでより豊かな社会の実現」をミッションに掲げ、多様性に対応して、社員や訪れる方々が「自分らしくいられる場所(Native Liart)」をビジョンに掲げています。場所というのは、箱(ハード)にこだわらず、人と人とのつながり(ソフト)を大切にすることだと思っています。  これらのミッションやビジョンを掲げてきたからこそ、共に働くスタッフは皆それぞれ震災で大変ななかでも、先に進むために協力をしてくれたのだと思います。  これからも「地域住民の心の拠り所となる居場所」を作るために、スタッフと共に頑張っていきたいと思います。  木ノ浦ビレッジには、8棟のコテージと研修棟があり、お部屋からは美しい海を眺めることができます。徒歩圏内には、映画「さいはてにて」のロケ地や、木ノ浦海岸の夕日を眺められるスポットもあります。  ぜひたくさんの方々に足を運んでいただき、木ノ浦の「時空が違う世界」を存分にお楽しみいただきたいと願っています。

木ノ浦海岸は夕日の名所。木ノ浦ビレッジから徒歩数分で、この絶景に出会えます(2025年4月撮影)

事業者プロフィール

ザアグラリアンテーブル合同会社

代表者:代表 山口侑香 所在地:石川県珠洲市折戸町ホ部25番1

取材後記

 代表の山口さんは、珠洲市出身で、共に働くスタッフや地域の方々など、人への思いやりにあふれる方でした。この地域の方々に育てられたという感謝の気持ちが、震災後に非常に速いスピードで木ノ浦ビレッジを再開させたことや、木ノ浦ビレッジを地域住民の心の拠り所となる居場所にしていきたいと思い、行動につなげていくことへの原動力になっていると感じました。  もはや、山口さんのエネルギーは木ノ浦ビレッジに留まらず、木ノ浦地区、珠洲市……と、より大きな社会の、より豊かな社会の実現に向かっていくのだろうなと、察します。  今回、コテージ「空」に宿泊させていただきました。リビング・ダイニングにある大きな窓からは木ノ浦海岸を眺めることができ、ふかふかのベッドがある寝室の小窓からは月明かりや朝日がキラキラと入り込んできました。まさに山口さんがおっしゃっていた「ここだけ時空が違う世界」を味わうことができました。1泊ではもったいないですね。  山口さん、人を大事にするのはもちろん大切ですが、たまにはご自身のことも労わってあげてくださいね。また来ます!

コテージ「空」のリビング・ダイニングにある大きな窓からの眺め。左手の海岸線は一部白い岩が見え、隆起したことが分かります(2025年4月撮影)

関谷由佳理(せきや・ゆかり、中小企業診断士)

 富山県氷見市生まれ、神奈川県横浜市在住。金融機関に勤務するかたわら、中小企業診断士として事業者さんのご支援やライターとして活動中。ほぼ故郷である能登のためにできることは何かを考えて、シロシル能登のライターに。能登の事業者さんに伴走し、能登復興の一助になりたいと思います。

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