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「おいしいね たのしいね」が珠洲の未来へ“こだま”するレストラン

イタリアン・カフェ こだま(合同会社KANEMORI)

更新日:2025年05月24日

食やイベントを通じて地域の復興に少しでも貢献したい

 私、兼盛康寛(かねもり・やすひろ)と妻の美和(みわ)が経営するナポリピッツァ専門店「イタリアン・カフェ こだま」は、珠洲市の中心部、道の駅すずなりから歩いて6分、珠洲市総合病院の東側の通りを一本隔てた場所にあります。  令和6年能登半島地震では、大切なスタッフ、家族は無事で、軽量鉄骨のお店も倒壊被害はなかったものの、自家製薪石窯とイベント用の石窯が壊れ、断水も長く続きましたが、近くに珠洲市総合病院があったことから、市内では最も早く断水が解消しましたので、満を持して2024年3月12日から営業を再開しました。  営業再開に当たっては、自家製薪窯は震災で壊れて使えなかったので、イベント用の石窯を修理し、妻の趣味で集めた貝で飾り付けして使いました。紙皿ではなく“ちゃんとしたお皿で出すあたたかい食事”にこだわり、地域の人々に日常の安心を届けることを大切にしました。震災で壊れた自家製薪窯も、2024年4月に長野の専門業者に依頼して再建しました。  現在の目標は、能登、珠洲の復興に必要な食の拠点として、このお店を次の世代に受け継いでいけるように、続けていくこと。そのうえで、能登で暮らし、働く若者の受け皿となり、「住みたい」「戻ってきたい」と思える地域づくりに少しでも貢献できればと思っています。

四角い外観のお店の正面に「こだま」の字とピッツァの樹のロゴマーク (2025年4月26日)

支えてくれた方々への感謝と復興への願いを込めて、美味しいピッツァを作り続ける

 営業再開までに、炊き出し会場やドラッグストアなどでお会いした地元の方々から、「お店再開しないの?」「温かいものが食べたい」という声をたびたびいただきました。このまま食べる場所も泊る場所も無いままでは、珠洲の未来はどうなるんだろうか……自分たちが生きていくためにも、どうにかせねばならないという強い思いで、とにかく自分たちに今できることをやろうと、営業を再開しました。地元の人たちが避難先から戻ってきたときに、食べるところがなかったら、これほど寂しいことはありません。今後の能登の復興のために、自分たちにできることは、心を込めてピッツァを一枚一枚丁寧に焼いて、そのピッツァを食べていただく、ほっと気が休まる場を皆様へ提供することです。  今後も、自宅の再建や人手不足、観光客が戻ってこないなかでお店の経営をどうしていくか、今後確実に人口が減っていくなかで、じわじわと衰退していく珠洲で本当にお店が続けられるのか……不安な気持ちは尽きませんが、震災後の炊き出しで声をかけてくれた佐賀のピザ職人の服部さんをはじめ、各種協会とのご縁、地元の皆さんにも助けられたことに感謝しながら、少しでも能登の復興の力になれるように願いを込めて、これからも美味しいピッツァを珠洲で作り続けていきます。  2024年11月からは、冷凍ピッツァの販売もオンラインストア(https://pizza-kodama.stores.jp/)で再開しました。7種類の冷凍ピッツァを全国に配送しています。

再建した2代目薪窯でピッツァを焼くスタッフの坂東さん(左)と兼盛さん(右)(2025年4月26日)

「こだま」の店舗運営を任せられる人材、店舗スタッフ求む!!

珠洲で採れる海藻(こな)をふんだんに使った磯の香り漂う「こなピッツァ」(2025年4月26日)

珠洲で暮らし、正社員として長期就業可能な人材

 今後は「こだま」の運営だけでなく、機会があれば、積極的に地域のイベントにも参加していきたいと考えています。イベント時は店舗も忙しくなることが多いため、店舗運営を安心して任せられる人材を必要としています。  正社員として長期就業可能な方で、珠洲でピッツァを焼いてみたい方、能登、珠洲が好きで住んで働いてみたいという若い方、店舗経営に関わり修行・独立を目指したい方、未経験でも大歓迎です! ぜひ来ていただきたいです。珠洲での住居探しなど、生活面についてもサポートしますのでご安心ください!

珠洲焼のマグカップでいただくコーヒー

接客・配膳・調理・洗い場、アルバイトスタッフがいないとお店は回りません

 震災後、店舗運営を支えるアルバイトも避難などにより減少し、現在は4名体制。募集してもなかなか人材が集まらず、困っています。ホールスタッフ(接客、配膳など)、調理スタッフ(仕込み、調理、洗い物など)を募集中です。地元の方だけでなく、能登の外から短期の方でも大歓迎です。住居などの相談にも乗りますので、ご安心ください!

珠洲焼プレートに映えるチョコレートケーキ

“イタリアン・カフェ「こだま」”について

 私は元々、白山市育ちで、二十歳のころに、祖父がいるここ珠洲市へ移住し、18年間林業を営んでいました。その経験も活かしつつ、ワイン好きが高じて、イタリアンの店を開業しようと一念発起し、ほぼ独学でイタリア料理を学び、2014年3月に今の場所にお店をオープン。多くの皆さんに愛され、今回の震災を乗り越え、2025年3月1日に創業10周年を迎えられました。  お店のこだわりは、  1. 薪と石窯で、高温・短時間でふっくら香ばしく焼くピッツァ  2. 珠洲の揚浜式塩田の天然塩で小麦の美味しさを引き立たせるピッツァの生地  3. 厳選した能登の旬の食材を使った豊富なメニュー(ピッツァだけで22種類!) です。  店舗の内装は、私の家族とスタッフの手作り。天井や床に木を張り、木の棚を設え、店内は木に囲まれたほっとする暖かい空間になっています。また、壁には私の母が描いた能登、珠洲の四季の風景画などを飾っており、居ながらにして能登の自然を感じることができるのもポイントです。  スタッフ一同、純粋に、能登、珠洲に人がもっと来てほしいと思っています。来てくれるだけで本当にうれしい。ピッツァを食べておいしいと言ってくれればもっとうれしい(笑) 能登内外からの皆様のお越しをお待ちしています!

事業者プロフィール

イタリアン・カフェ こだま(合同会社KANEMORI)

代表者:兼盛康寛 所在地:石川県珠洲市野々江町サ部104-1(道の駅すずなりから徒歩6分、500m) TEL:0768-82-0525営業時間:11:00~15:00(L.O. 14:00)/17:00~22:00(L.O. 21:00) 定休日:水曜日、木曜日(祝日営業) 駐車場あり、全席禁煙、貸切可、個室なし

取材後記

 取材で「こだま」を訪問させていただいたのは、4月下旬の晴れた暖かい週末のランチ営業の時間帯でした。温かい雰囲気の店内は、地元の家族連れ、友達同士のお客さんで席が埋まり、皆さん、焼きたてのピッツァをおいしそうに食べていらっしゃいました。そんな中、兼盛さんご夫婦とアルバイト4名の皆さんが、きびきびと動き回り、接客されている。私も珠洲滞在中、二度食事させていただき、美味しいピッツァとパスタを楽しませていただきました。それはまさに、日常のレストランの風景そのものでした。  ただ、お話をお伺いすると、震災前と比べて、観光客もまだまだ少なく、お客さんは地元の方も来てくれるものの、ほとんどは支援者、ボランティアと工事・解体業者の皆さんが中心で、兼盛さんのご自宅も震災で半壊したため、現在も不自由な生活をする日々が続いていらっしゃるとのこと。見た目の日常とはまったく異なり、復興の道のりがいかに遠いことか、痛感しました。  東京の自宅に戻ってから、待ちに待った「こだま」の冷凍ピッツァが届きました。お店で食べるのとまったく変わらない美味しいピッツァに、家族も感動しきりでした。でも、私がもっと感動したのは、冷凍ピッツァのパンフレットに書かれていたメッセージです。 “おいしいね おいしいね たのしいね たのしいね いつまでも 何度でも どこまでも その声が 「こだま」していきますように”  明るく前向きな兼盛さんご夫妻のお人柄がそのまま表れている、本当に温かい愛情のこもったメッセージです。そんなメッセージに共感する方、「こだま」で働くことに少しでも関心のある方、是非兼盛さんにご連絡ください!  私は、今回の取材で珠洲には、いつでも何度でも美味しいピッツァを食べられるお店があることを知りました。これからは珠洲を訪れる方々に「こだま」があるから安心してとお伝えできます(笑) 今後も応援させてください!

福井正洋(ふくい・まさひろ、会社員)

本業のかたわらプロボノライターをしています。奈良県出身、東京都在住で北陸とは地縁はありませんでしたが、2024年6月まで2年間、単身赴任で金沢に住んでいた際、令和6年能登半島地震が発生し、これもご縁と思い、折を見て能登の復興活動に参加してきました。今後もシロシル能登を活用して“関わりシロ”を見つけて活動していきます。

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