
いしりが拓く伝統とリブランディング。47年企業、イカの町で再挑戦 "カネイシ"
有限会社カネイシ
更新日:2025年6月10日
能登の伝統的な「いしり」を世界へ

奥能登に古くから伝わる魚醤油「いしり」(カネイシのWebサイトから)

魚醤油「いしり」の製造現場(カネイシのWebサイトから)
「仲卸業47年に幕」イカ激減で事業転換を決断

小木港に停泊するイカの遠洋漁業船(撮影:野上文大朗)

有限会社カネイシの代表取締役、新谷伸一さん(撮影:野上英文)

「ここはイカの町・小木」と記された看板(撮影:野上英文)
「震災翌日、いしりを救え」緊急事態で動いた

いしり貯蔵施設近くの海岸。地震で岸壁の一部(写真手前)が崩落した(2025年4月撮影:野上英文)

小木港に停泊するイカの遠洋漁業船(撮影:野上英文)
4カ月間の売り上げ消失から復旧へ

貯蔵施設で仕込み中のいしり(撮影:野上英文)
「支援したい」 町を出入りする人たち

カネイシの会社兼店舗にある売店(撮影:野上英文)
「ネガティブをポジティブに」イカキングの奇跡

全長13メートルの巨大なイカのモニュメント「イカキング」(撮影:野上英文)

バズった「冷凍イカ」の投稿(撮影:新谷伸一さん、カネイシ公式Xから)
商工会長として「定住人口の確保が最重要」

カネイシのいしり貯蔵施設で語る新谷伸一さん(撮影:野上英文)
外部の力も取り込む祭りの新たな継承の形

カネイシの事務所にある「とも旗祭り」の写真(撮影:野上英文)
リブランディングに欠かせない個性と風土

カネイシの貯蔵施設で仕込み中のいしり(撮影:野上英文)
具体的に必要な支援
事業者プロフィール
取材後記
老舗の和菓子屋などで、こんな話をよく聞く。「定番商品であっても、何十年もそのままってわけではない。その時代、時代に合わせて新しく刷新しているものですよ」 能登町小木も、47年企業のカネイシも、未来永劫に「イカの町」を看板にはできない。時代の変化に合わせた再生を考えていた。皮肉にも半島を襲った地震が、その現実を全員に突きつけた。時計の針を一気に進めたようだ。 ただ、希望もある。地元の共助、イカ釣り漁業者のネットワーク、移住希望者。個性もある。手垢のついていない風景、能登の食。さらに、リブランディングの経験もある。いしりの逆輸入による国内の販路拡大、世界からも注目された巨大モニュメントに「冷凍イカ」……。 思い返せば20年以上前、私がはじめて能登を訪ねたとき、ふと目について使い方もわからないまま買って帰ったのが「いしり」だった。今回の取材で能登空港に降り立ったときに、後ろで並んでいた外国人が話題にしていたのも「イカキング」だった。そうして話題を自ら作れる町は、そうそうない。 育んできたDNA。新谷伸一さんが語るように、固定観念にとらわれず、新たなフィールドで手足をでっかく伸ばしてほしい。
野上英文(ジャーナリスト)
神戸出身、中学2年生で被災。2003年に朝日新聞社入社、初任地の金沢では連載『石川と阪神淡路大震災』『能登球児は、いま』などを企画・執筆した。新潟中越地震や3.11、インドネシア・スラウェシ島地震などで災害報道に携わる。2023年にユーザベースに参画、編集者・パーソナリティとして活動し、25年にはNewsPicks防災部を有志で立ち上げて減災・防災の情報発信をしている。著書に『戦略的ビジネス文章術』『プロメテウスの罠4』ほか。