
能登の空に伸びる「垂直の枝」“陽菜実園”が美味しさでつくり出す価値
陽菜実園
更新日:2025年6月30日
農法には妥協せず、離農する農家の畑は引き受けていく
DOHO STYLE 肥料は与えず、上に伸ばし元気に育てる

陽菜実園では果樹栽培の常識に反して、垂直に伸びる枝を剪定せずに残します(2025年4月28日撮影)

上に伸びる枝で植物ホルモンは活性化。甘い実をつけた枝は頭を垂れます(2025年4月28日撮影)
無添加・無燻蒸にこだわったドライフルーツ
離農する農家の畑を引き受け、能登の農地を守る
ぜひ陽菜実園にお手伝いに来ませんか? 1+1は2以上になります

取材当日もボランティアの若者がお手伝いに来ていました(2025年4月28日撮影)

地割れでできた70センチの段差。急勾配になり、機械を入れる作業ができなくなっています(2025年4月28日撮影)

地割れで根がむき出しになった場所には枯れ枝が多く、枯れてしまわないか懸念されます(2025年4月28日撮影)
陽菜実園について
果樹農家「陽菜実園」誕生
震災で揺らいだ心、あらためて気づいた能登の魅力

見事に上に伸びる平核無柿の木の前で(2025年4月28日撮影)
事業者プロフィール
取材後記
私が陽菜実園にうかがったのは、4月下旬の穏やかな午前中でした。 県道6号線からお寺に向かう小道に入り、急坂を登っていく。鬱蒼とした森を抜けて視界が開けると、そこに陽菜実園がありました。 透き通る新緑。空に向かって垂直に枝を伸ばす柿の木々。柳田さんが情熱を注ぐその農園は、どこか「秘密基地」を感じさせるものがありました。 広大な農園には、今すぐやらなければならない仕事が山ほどあります。それでも柳田さんの表情は常に穏やかでした。 マラソンランナーでもある柳田さんは、「木を元気に育てる」過程を、人の体に例えて表現してくれます。「体は大きくても脂肪だらけ」「細マッチョ」「元気すぎて落ち着きがない」といったように。私はアスリートなので、それらの説明がひとつひとつ腑に落ちました。はじめは、こうした表情がご自身のダイエットや食生活の改善の経験に基づいたものなのだと思っていました。しかし、農園を歩き回って、絶えず剪定する枝を判断して鋏を入れる柳田さんを見ているうちに、なるほど、これは「木の声を聞いている」のだと思うようになりました。木を人と同じように見て、対話しているのだろうと。 「陽菜実園」という名前は、陽射しや菜っ葉、実りという、この農園のイメージであると同時に、ご家族のお名前の一文字ずつと、もしもうひとりお子さんが生まれたらつけたかった文字も含んでいるのだそうです。 柳田さんのお話には、重要な局面でたびたび奥さまの言葉が出てきます。大阪から移住してきた柳田さんの心を常に支えてきたのは、この地で出会った奥さまでした。その奥さまと最愛の娘さん。家族の愛情と手塩にかけた柿の木々に囲まれるこの秘密基地は、春の陽射しの中でとても眩しく見えました。 美味しい果実は、こういう場所で生まれるのだなということを強く感じました。

長島太郎(ながしま・たろう)
海を泳ぎ、山を走る耐久性アスリート。ラジオ局勤務。経営学修士。 20代で世界19カ国をバックパックで歩く。 国会記者を経て、ラジオ番組・事業プロデュースに携わる。 現在、国家資格 登録日本語教員の取得のため学習中。 ケニア人駅伝ランナーに日本語を教えるのが夢。