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観光をフックに! 「復興」という生態系のなかで入口の役割を全うする“能登DMC”

能登DMC合同会社

更新日:2025年8月15日

能登の里山里海に魅せられた移住と震災

 能登半島全域の観光地開発に取り組んでいる能登DMC合同会社の小山 基(こやま・はじめ)です。  能登との最初の関わりでいうと、元々移住しようと思っていたなかで、良い移住先を探していて、能登に興味を持ったんですよ。  能登島って昔は加賀藩の流刑の地だったんですよ。  その歴史を「うれし!たのし!島流し」というイベントにしたものに参加者として家族で参加したんです。  そのイベントで地域の人と仲良くなって、現地のさまざまな人の声を聞いたり、里山や里海と呼ばれる環境が好きだった私は、能登の自然の豊かさに魅了され、移住を決めました。  移住してからは能登島に妻と子供3人と共に暮らしています。  震災当初は横浜にいて、SNSやニュースで現地の状況を見て、ただただ心配が募るばかりでした。  すぐにでも戻りたかったのですが、SNSでは『自衛隊の邪魔になるからボランティアは行かない方がいい』という声もあり、葛藤がありましたね。  それでも1月4日には能登に戻り、その後2ヶ月間は避難所運営などのボランティアに従事しました。  いち早く戻れたことは良かったのですが、能登DMCの仕事として予定していたツアーが実施できなくなったりして大変でしたね。

観光を通じて能登を盛り上げる、関係人口創出への思い

 能登DMC合同会社では、『失われつつある「能登の里山里海の営みと産業」を新たな観光ビジネスで次世代へつなぐ』ことをビジョンに活動しています。  私自身も能登の里山里海の営みに魅力を感じて移住したので、この素晴らしさを次世代に繋ぎたいという思いが強いです。  主な事業としては観光地域づくり事業と訪日外国人観光客向けのランドオペレーター事業を行っています。  現在特に注力しているのは、関係人口づくりと観光の復興です。  関係人口に関しては、若い担い手が圧倒的に足りていないことや、観光客が金沢までは来ていても能登まで足をのばす人が少ないことが課題です。  震災で疎開してしまったり、住み続けることが難しくなった人もいるので、能登に残るプレイヤーが少ないのが現状です。  若い人は大学などで能登を離れてしまう傾向もあります。  インバウンドで言えば、金沢までは来てくれるけどそのあと能登に来てくれる人はごく一部なんです。  能登には魅力がたくさんあるのでその魅力をどのように伝え、現地まで来てもらうかが大切ですね。  現在は、皆さんに能登に来ていただけるようなさまざまな観光ツアーやアクティビティのコンテンツを作っている最中です。

能登の関係人口創出の「入口」を担う

 まさに能登に関心を持つ人々との初期のきっかけ、「入口」を創ることが私たちの仕事であり、役割なんです。  もともと、大学で生態学を専門に学んでいたのですが、生態系でもさまざまな動植物がそれぞれの役割を担っていますよね。  生態系全体が健全であるためには、それぞれが適切な役割を担うことが重要です。能登の復興活動も似ているところがあると思っていて、私たちはそのなかで観光を通して『能登と関わるきっかけづくり』という役割を担っていると思うんです。  私たち能登DMCのほかにも、能登に事業を創る役割を担っている事業者や団体もあるので、そこに繋げたりすることも重要です。  それぞれが自らの役割を全うすることが能登の復興につながり、震災前以上の能登を創ることにつながると思っています。

今の能登の魅力を発信する「のと100」プロジェクトとインバウンド戦略

「のと100」プロジェクトでは、今の能登でできる100のコトを発信し、能登に関わりたい方の関わりシロを見つける活動をしているんです。  震災後しばらくは「今、ここに行けますよ」という紹介をしていたのですが、復旧から復興へと変わりつつある今年からは能登の観光PR、魅力を伝える情報発信へとシフトチェンジしています。  復興だけではなく、シンプルな観光地としての能登の魅力を発信していくのが重要です。

小山さんも参加する「のと100プロジェクト」の様子

 他にも、能登DMCでは海外からの観光客を呼び込むインバウンド向けコンテンツの造成にも力を入れています。  震災でこれまで作ってきたコンテンツができなくなってしまったので、今は新しいツアーを作っている最中なんです。  特定の海外の旅行会社に直接売るBtoBの形ですね。  ターゲット層から旅の仕方まですべてを想像しながらコンテンツを作成しています。  なかにはディープなものもあって、「能登に住むおばあちゃん3人組の日常を体験する」なんていうユニークなツアーも計画中なんですよ(笑)  こうした旅行ツアーやサイクリングツアーを通じて能登との関わりを持ってくれる人を増やしていきたいと思っています。

能登DMCではインバウンド観光客向けにユニークな体験を提供

「マンパワー不足」という現在の障壁

 能登の魅力を次世代へ繋ぐためには、地域の若い世代が参画してくれることが不可欠です。  しかし、そこには深刻なマンパワー不足という課題が常にあるんです。  現状、プロボノとして手伝ってくれている人も2名いますが、それでも人材は足りていません。  特に足りていないのはプロジェクトマネージャーのような人材です。  能登には「何かやりたい」と思っている人は多いのですが、それを具体的な行動に移すためのスケジュール管理やタスクの細分化ができない、わからないという声が多くあるんです。  私自身も複数のプロジェクトを抱えているので、すべてには手が回りきらないのが現状です。  進捗管理や、スケジュールのたたき台を作ってくれるだけでも助かります。  完璧である必要はないのでそれこそプロジェクト管理を学びたいという方にもおすすめですね。 「なんでも屋さん」のような人も必要です。  以下のようなことをしてくれる人がいると本当に助かりますね。 ・議事録の修正や表へのまとめ ・ミーティング後のタスク報告 ・スライド資料の修正(文字ベースのスライドをビジュアル的に魅力的にする作業)  これらは細かくて一見雑用に見えそうですが、社会人の基礎的スキルだし、実際の会議なんかの様子もわかるので学生さんには本当にいい経験になりそうですね。  気になる人がいたらぜひ連絡してください。いつでもご連絡をお待ちしています。

能登の生活、文化を体験できるユニークなツアーを考案中!

事業者プロフィール

能登DMC合同会社

代表社員:小山 基 所在地:石川県七尾市鍛冶町

取材後記

 この度は取材をさせていただきありがとうございました。  生態系を研究されていた小山さんならではの「役割分担」という復興への視点が印象的な取材でした。  生態系の中で生きる動物たちのように、それぞれの役割を全うすることが復興、そして新たな繁栄や次世代へ能登の魅力や里山里海を守り、繋げることになるのだなと感じました。  旅行ツアーに関してもおばあちゃんの1日体験などユニークなものがあったりと聞いているだけでワクワクしました! 「ディープで面白いでしょ?」と笑うちょっぴり少年のような小山さんの顔が1番素敵でした。  皆さんもぜひ能登DMCのツアー情報をチェックしてみてくださいね!  読者の皆さん、最後まで読んでいただきありがとうございます。  最後に! 「行動で応援すること」が何よりも小山さんや能登の方々の助けになると思います。  小山さんが必要としている人材になれるのは他でもなく、読者の皆さんです。 「私にこれをやらせてください」という声を待っています。

松村 叶(まつむら・かなた)

 早稲田大学在籍中の大学生&経営コンサルタント。ライターとアパレル立ち上げに挑戦中。東京の人材会社インターンにて新規事業企画、営業等を学び、スラッシュキャリアを大学生のうちから経験すべくさまざまなことに挑戦しています。今後は大学生&個人事業主&クリエイターの3足のわらじを履いて活動していきます。 https://www.instagram.com/kxnxtx.nine

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