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中能登で「能登のために」お酒をつくり続ける”鳥屋酒造”の冒険

鳥屋酒造株式会社

更新日:2025年5月14日

能登のために、「能登の酒」をつくり続ける

「鳥屋酒造」(とりやしゅぞう)は従業員7人の小さな酒蔵で、これまで細々とお酒をつくってきました。  中能登エリアは地震による甚大な被害は少なく、幸い酒蔵の建物は無事だったのですが、酒蔵の中の機械や瓶などは被害を受けました。しかし、機械などの修理や買い替えには公的な支援は受けられず、自分たちでなんとかするしかありません。  それでも、この1年は「能登のためになにかできないか」という思いで新しいことに挑戦してきました。

鳥屋酒造外観

オール中能登のお酒、新たなジャンル…新商品の開発

 震災前の2024年秋から、酒造りに必要な水、お米、人、「オール中能登」のお酒を作ろうと仕込みをしてありました。  幸い、大きな揺れでも味は壊れずにお酒は無事だったので、仕込み水を汲んだ中能登町の眉丈山(びじょうざん)にちなんで『眉丈山』(まゆたけやま)と名付けました。  他にも新しいお酒をつくりました。まろやかで柔らかく、料理の邪魔をしない味が特徴です。その良さが伝わるようにと「せせらぎ」という名前を社員みんなで考えて付けました。  また、広島県にあるナオライ株式会社さんが当社の倉庫を活用して「浄酎」(じょうちゅう)の浄溜所を設立されました。浄酎に使うお酒として、鳥屋酒造も協力させていただくことになりました。まもなく、日本酒を浄溜した新しいお酒が誕生する予定です。  この秋には貴醸酒(きじょうしゅ)にも挑戦します。仕込み水の代わりに日本酒を使うんです。これを作るのが40年来の夢だったのですが、この機会にあえて挑戦しました。。  従業員が少なく、新商品の開発やイベントの出展もこれまでなかなかできていなかったですし、経営も四苦八苦ではあるのですが(笑) でも、ここ何十年の中では充実した1年でした。こういった挑戦で少しでも地域のお役に立てればと思っています。

酒蔵を案内してくださった田中博史(たなか・ひろし)さん

四大杜氏に名を連ねる能登の酒、能登復興のためにもぜひ、手に取ってほしい

 こんな時だからこそ、ぜひ能登のお酒を1本手に取って飲んでほしいなと思います。  能登の杜氏は、日本四大杜氏のひとつとされるくらい、酒造りの伝統と技術が高いんです。  でも、物産展では日本酒ってなかなか売れないんですよね(笑)  ぜひ、この記事を読んだことをきっかけに、能登のお酒を味わってほしいです。

鳥屋酒造のお酒は酒蔵の奥で1本ずつ手作業で詰められている

小さいながらも中能登で100年以上続く、鳥屋酒造

 鳥居酒造は大正8年から続く酒蔵です。  昔火事で一部消失したのですが、そこから建て直してずっとこの地でお酒をつくり続けています。  代表銘柄は「池月」(いけづき)。  小さな酒蔵で、特約店にのみ卸しているので街なかで見かけることは少ないかもしれませんが、飾らない自然体で皆様に愛されるようコツコツ商いをしていくことをモットーにしています。  購入していただける方は全国の特約店か、特約店で運営いただいているネット販売でお買い求めください。

事業者プロフィール

鳥屋酒造株式会社

代表者:田中博史 所在地:石川県鹿島郡中能登町一青ケ−96

取材後記

 中能登町は能登半島の中部にある街。地震の被害は能登半島の北部地域に比べると少なかったそうですが、被害がなかったわけではありません。むしろ、被害が少なかった故に支援が届きにくいという一面も。。 「これまでぼやっと酒造りをして、ぼやっと1年が終わってたんですけど、この1年は『能登の酒づくりを止めない』なんて思いもありながら、ここ何十年間の中では一番充実した1年だったなと思います。」取材中に田中さんがおっしゃった言葉です。  もちろん、ぼやっと酒造りをしていただけで100年も酒蔵が続くわけがありません。取材をしているあいだにも、地元の方が何人かお酒を買いに来る、それだけ地域でも愛される酒蔵でありつづけるのは、並大抵のことではないはずです。  新しい挑戦をするには、人手も資金も必要で、大変なことだと思うのですが、「お金が無い」と嘆きながらも田中さんは楽しそう。 「貴醸酒も、ほんとは40年前からやりたかったんですけどね、先代に反対されちゃって(笑) でも、今だからこそ挑戦してみようと思うんです。」  取材後、職場仲間と「みなもにうかぶ月」を飲みました。飲みやすくて香り高くなんと美味しいこと! あっという間に空っぽになり、ネットで追加注文することに。  皆さんにもぜひ飲んでほしい。田中さんが挑戦される貴醸酒も、ナオライさんとの浄酎も今から待ち遠しくて仕方がない!

島田真衣(しまだ・まい、会社員・ライター)

奈良県出身。鉄道会社のローカル線活性化企画・広報を経て現在は日用品メーカーの広報・オウンドメディアを担当。趣味は一人旅、大自然を満喫すること。

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