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能登が能登らしく復興するために、まずは友達になってほしい。“一般社団法人能登復興ネットワーク”

一般社団法人能登復興ネットワーク

更新日:2025年8月30日

復興だけではなく、その先のことも。

 石川県七尾市を拠点に、能登の復興に関する活動を行っている一般社団法人能登復興ネットワークで事務局長/理事を務めている森山奈美(もりやま・なみ)です。 「能登は復興が進んでいない!」と勘違いされがちですが、実際は少しずつではありますが、着実に復興に向かっています。しかしながら、被災した市民が自分たちで議論をして、復興を実装していくためには相応の時間がかかります。そして、どうしても、どうしても、スピード感を上げることができない、それなりの事情もあるのです。  そんな状況のなか私たちは、「復興」だけに視点を置くのではなく、限界集落と言われる場所もある能登という地域を「持続可能なまち」として変身させていくことが、とても大切だと考えています。  私たちの合言葉は、【つたえる】【つなげる】【ささえる】です。

【つたえる】現場の情報を、知ってもらう機会をつくる

 2024年1月1日の能登半島地震や、同年9月21日の奥能登豪雨発災直後と比べると、メディアの発信も少なくなり、石川県外にいると能登がどんな状況なのかを知ることが難しくなっていると思います。そんな今だからこそ、被災者であり、支援団体として活動もしている私たちの生の声を聞いてほしいと思っています。  そんな生の声を多くの人に【つたえる】ために、誰でも参加可能なオンライン会議「シン・いやさか会議」を月に一度開催しています。この会議では、能登で活動している方々が参加し、いまの状況や、将来に向けて考えていることなどが話し合われているので、会議に参加するだけで能登との関わりしろについて知ることができます。  また、能登の人にインタビューし、能登が能登らしく復興する様子を発信する「能登の遺伝子」というnoteも運営し、より多くの人に知ってもらう機会になればと願っています。 能登の遺伝子|NRN 能登復興ネットワーク(いやさか)|note https://note.com/nrn_iyasaka/m/m4ff7ac38ed01  まずは「知ろうかな…」で構いません。できれば、「かな…」で止まってしまうのではなく、もう一歩踏み出して、もっと深く能登に触れてほしいと思っています。  そして、実際に能登に来てほしいのです。能登の空気や、能登での生活を通して、現実に起きていることを知り、能登の最新情報を自分に取りこんでほしいです。もちろん、機会があればボランティアに来ていただけると大変助かりますが、純粋に能登へ観光や遊びに来てもらえるだけでも大歓迎です。能登でいま何が起きているのか、人々はどう動いているのか、そしてどんな未来を描こうとしているのかを感じてもらえたら、嬉しく思います。  ボランティアに行きたいけど、自分にできることがあるのか不安だと迷っておられる方もいらっしゃると聞いています。またボランティアに参加すると「偽善的な行動だと思われてしまうかもしれない」という葛藤もあると聞いています。  でも、安心してください。私たちは、来てくれるだけでも嬉しいのです。人手はまったく足りていませんから、やることはいっぱいあります。深く考えなくとも大丈夫です。「我が子にボランティアを体験させてあげたい」と、来ていただけるご家族連れもいます。私たちにとって、きっかけはどのようなことでも良いのです。まずは能登に来て、能登に触れてほしいと思っています。  皆さんが能登に足を運んで、能登に触れてくれれば、能登を好きになってもらえる自信はあります! 不安でも、偽善でも、ぜひ能登に来てください。能登に来れば、きっと皆さんもいろいろなことを感じ、何かを得ることができると思います。  このような背景や、皆さんへの期待があって、私たちは【つたえる】活動を行っています。

【つなげる】能登とのつながり方を考え、能登の未来を描く

 復興とは、被害にあった地域を「元の状態に戻す」ことではなく、地域の未来を新しく創り上げていくことだと考えています。  能登には、被災から1年半以上が経過してもブルーシートがかけられている家屋があります。解体されないまま、家財道具もそのままになっている家屋も多く見かけます。その背景にはさまざまな理由があり、それらの課題をクリアすることができていないのです。  例えば、「その家屋にだれも住んでいない」がひとつの理由です。家主が逝去されている場合などは、公費解体申請など復旧のために必要な手続きをする人がいないことになります。あるいは家主が遠くに住んでおり、その家に住む予定がない場合、家屋を修復して活用しようとはしないでしょう。  また、「高齢化が進んでいる」ことも理由となり得ます。あと何年住むかわからない住宅を修復するよりも、なんとか日々の生活を送る場所だけを確保しようとするのは、当然の心理だと思います。  これが、ここ能登にいま存在する課題です。しかしよく考えてみると、家屋が空き家のまま放置されたりして、まちが存続しづらくなってしまう状況は、能登半島地震や奥能登豪雨が発災する前からたくさんありました。このまちをこれからどうしていくのか、そのために何ができるのか、を考えることは、元より必要なことだったのです。  そこで私たちは、「能登とのつながり方を考える」をテーマに、能登に住んでいる人や、復興の担い手として活動している人、能登の復興に関わりたいと考えている県内外の人と交流しながら、能登の未来について話し合う、のと発酵的復興会議を2025年2月に実施しました。  ひとりだけじゃなくて、みんなでやる。その機会を作るのが、私たちの【つなげる】という活動です。

【ささえる】新しい能登をつくる人達を支援する

 私たちが住む、この能登を守るためには、何をするべきなのか。それは「守るために、つくる」ことだと考えています。いまの能登の凝り固まった観念や、昔から続く複雑な事情を乗り越えて、能登を新しくつくりなおすことが大切だと思っています。  人が集まる場所をつくり、持続可能なまちをつくるには、より多くの人が生き甲斐を持って働くことができる仕事を作らないといけません。ところが「新しく仕事を作る!」と言葉では簡単に言えますが、実際はそう簡単ではありません。  まずは自分で仕事をつくることができる人を集めて、人を雇える状態を整えて、そして周りの人の仕事を作っていく。いろんな知識や技術を持った人を集め、そして自分ができることをどんどんアピールしてもらい、その都度起きる新しい課題をクリアして……という活動を繰り返さなければならないのです。  そんな活動が、いま能登のいたるところで行われているのですが、どうしても活動のためのリソースが足りない状態が続いています。そして中心的に活動してくれている人に仕事が集中してしまい、頼りっきりになり、課題をさばききれなくなり、最終的に倒れてしまう。  これを防ぐために、能登で活動するリーダーの右腕として動いてくれる人を募集してマッチングする、右腕プロジェクトという外部人材マッチングを提供しています。  能登を守るために、新しい能登をつくろうとする人々を支援することが、私たちの【ささえる】活動です。

持続可能な能登を実現するために

【つたえる】【つなげる】【ささえる】を合言葉にして活動している私たち能登復興ネットワークは、いまは私と伊東とふたりでやっているのですが、どうしても限界があって……私たち自身に【ささえる】が足りていません(笑)  私たちと一緒に活動してくださる方を、絶賛大募集中です。例えば、プロジェクトマネージャーができる方や、補助金などの資金調達ができる方、あるいは私たち能登復興ネットワークにいま何が足りていないかのを分析してくださる方などに、一緒に活動していただけると嬉しいです。人が集まらなければ、何もできませんし、何も始まりません。1つずつのきっかけから、ご縁の輪を広げていきたいと思っています。「持続可能なまち」のモデルを作ることに共感いただけける方、ご連絡お待ちしております! 

友達になって一緒に能登の未来を考えてほしい

 私たちは「大変だから助けてほしい!」ということを訴えているわけではなく、「友達になって一緒に能登の未来を考えてほしい」と思っています。まずは、私たち能登に住む者の生の声を、聞いてください。

能登半島を模したポーズをレクチャーしていただきました

森山奈美からのメッセージ

 能登らしいなと感じる人って「なんでも自分でできちゃう人」が多いのです。例えば、町のお医者さんがユンボで泥かいて家を建ててしまったり……想像できますか? 午前中は診療して、午後は地域の人のために。そんなかっこいい人たちがたくさんいます。  だからこそ「能登が大変だから助けてほしい」というよりは、「能登の人たちが自分の足で立って歩いていけるような関わりを持ってほしい」と思っています。そのために、まずは能登の人と友達になってください!  また、私はゴスペルチームでゴスペルを歌って、生の声を広げる活動もしています。一緒にゴスペルを歌ってくれる人も大募集です!

伊東鈴乃からのメッセージ

 私は、2024年4月に能登に移住してきました。  能登を自分の足で歩いて、自分の目で見て、自分の中で解釈して、そして何をしようかなと考えながら過ごしています。能登の現地の人と話して、見て、体感してほしい! まずは触れてもらって、素敵なところを知ってほしいです!

一般社団法人能登復興ネットワークについて

 2025年5月現在、主に以下のような活動を行っています。 【つたえる】 ・シン・いやさか会議:能登からの生の声に触れることができる報告会を実施し、外部に向けたオンライン上の情報発信を行っています。 ・能登の遺伝子:能登の方へのインタビューを実施し、能登が能登らしく復興する様子をnoteで発信しています。 【つなげる】 ・情報共有会議の開催:どの地域で誰が何をしているのかを共有し、ともに課題を出し合い、情報を共有するための場をつくっています。 ・支援ニーズの調整:被災地からの要望に対し、地域内外からのボランティア・学生ボランティアの派遣や、そのニーズに応えられる支援者/支援団体(個人・企業を含む)とのマッチングに取り組んでいます。 【ささえる】 ・右腕プロジェクト:復興の担い手の元に人材を派遣するため、復興への関わりしろを明らかにし、コーディネートしています。 ・勉強会の開催:過去の被災地の知見を学び、能登に活かすための連続勉強会を開催しています。

ライターの連写に笑ってくれたお2人

事業者プロフィール

一般社団法人能登復興ネットワーク

事務局長/理事:森山奈美 所在地 :石川県七尾市生駒町

取材後記

「どんな顔して、どんな声色で、どんな言葉でインタビューしよう……」  何度も旅行に訪れるほど、能登が好きでした。景色も、人も、温泉も、食べ物も、大好きでした。……過去形になってしまったのは、震災がきっかけです。  とにかく情報が少なく、メディアや噂に踊らされ、「復興は進んでおらず、町の雰囲気は暗く、旅行になんて到底行けないだろう」と、勝手に思い込んでいたからです。  その思い込みは、インタビューを始めてから、ものの5分で取り除かれました。とにかく、森山さんと伊東さんがとっても明るい人。笑顔いっぱい、元気いっぱい。インタビューを進め、返ってくる言葉1つ1つにエネルギーを感じました。  取材に伺った2025年3月の時点では、営業が再開している宿泊施設は限られていて、今までのような観光やレジャーとして能登へ行くのはためらいがあったけれど、町の暗さはまったく感じない。能登では、このお2人のようなエネルギッシュな方たちがしっかりと活動されているからなのだろう……と感じました。  被災地から遠く離れたところに住んでいる私たちが持っている印象と、実際の能登の雰囲気は、別物です。「生の声を聞く」ことの大切さを実感する機会になりました。  とは言え、抱えていらっしゃる問題はたっぷり。でも、「大変だから、助けて欲しい」ではありません。地に足をつけて、前を向いて、未来に向けて進んでいる能登を、まずは知ってほしいということ。  次にお会いするときは、「お久しぶりです! お元気でしたか!」と笑顔いっぱい、元気いっぱいに挨拶をしたいです。

高岸麗美(たかぎしれみ)

 WEBやSNSなどを活用した発信を得意としたマーケターとして活動する、旅行とグルメとキャンプとお酒が大好きなフリーランス。  雑誌編集者だったころの経験を活かし、インタビュアー兼ライターとしても全国を飛び回っている「いつもどこかしらに行っている人」。  過去に何度も能登へ旅行した経験から、現在の能登に対して、自分のスキルを活かしたお手伝いができないかと思ったことがきっかけで、能登への取材活動を行っている。

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