
農家の「働き方」の未来を求めて“瀬法司農園”が描くオーガニックビレッジ
瀬法司農園
更新日:2025年5月10日
新しい「働き方」で、職業としての農家を魅力的に
スマート農業で地域ぐるみのオーガニックビレッジを創る
瀬法司農園の「働き方改革」

古来の「アイガモ農法」にならった「アイガモロボット」。スマートフォンで入力しデータに基づいて田んぼの敷地の隅々まで巡回し、水を掻き回すことで雑草の光合成を妨げる抑草方法 (2025年4月29日撮影 写真提供:瀬法司農園)
「地域ぐるみ」のオーガニックビレッジをつくる

珠洲市オーガニックビレッジ協議会がコンピューター技術を提供するビニールハウス (2025年4月29日撮影)

珠洲市オーガニックビレッジ協議会がコンピューター技術を提供するビニールハウスで育つ苗床(2025年4月29日撮影)
オーガニックビレッジには「地域の外」からのサポートが必要
瀬法司農園について

地下を通って水田に水を供給するパイプラインの出口。震災で破損したが、なんとか2024年の田植えまでに修理が間に合った(2025年4月29日撮影)

2024年秋、収穫を目前に豪雨災害で倒れた稲。水浸しで長く機械が入れなかったため、そのままになっている(2025年4月29日撮影)
事業者プロフィール
取材後記
新緑と八重桜が美しい4月末の穏やかな午前中、瀬法司さんはご自身の半生について、とても穏やかに話をしてくれました。 金沢からのUターン。無農薬野菜への参入。震災と豪雨災害。そしてオーガニックビレッジの構想。 いずれもキャリアを大きく転換するような決断だったはずなのに、口調はきわめて静かで、論点は整然としていたのが印象的でした。きっと、いつもご家族のために、目の前のことをきちんとなさってきたから、そしてこれからもそうだからなのでしょうか。 瀬法司さんからアイガモロボットのお話をうかがったとき、私はなぜかその元になった「アイガモ農法」という言葉を知っている自分に気づきました。30年以上前に何度も読んだ漫画「夏子の酒」(尾瀬あきら作)に描かれていたからです。有機栽培でしか育たない幻の酒米を育てる主人公の夏子。彼女を励ました「有機農法は世界を席巻する」という言葉。しかし夏子は「世界」どころか村ひとつまとめられない自分に悩む。 ところが、四半世紀以上たった今、現実の世界では、私がうかがう前日に、珠洲市全体が「オーガニックビレッジ宣言」をしているのです。まさに「地域ぐるみの取り組み」として。 もしかしたら「目の前のことをきちんとやること」と「世界を席巻すること」はほとんど同じなのかも知れないなと思えた素敵な時間でした。 最後に写真を撮らせていただいた際、瀬法司さんはインスタ映えなど考える間もなく、そのままの表情で写ってくれました。自然な笑顔の瀬法司さんは、尊敬するお父様から受け継いだ田んぼを背景に、最高に「映え」ていました。

瀬法司農園の田んぼの前で(2025年4月29日撮影)

長島太郎(ながしま・たろう)
海を泳ぎ、山を走る耐久性アスリート。ラジオ局勤務。20代で世界19カ国をバックパックで歩く。国会記者を経て、ラジオ番組・事業プロデュースに携わる。現在、国家資格 登録日本語教員の取得のため学習中。ケニア人駅伝ランナーに日本語を教えるのが夢。経営学修士。