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“松波酒造” Vol.2 トレーラーハウス仮店舗2025年9月オープン!

松波酒造株式会社

更新日:2025年8月27日

 松波酒造を取材したライターの井上です。2025年4月に公開した記事でもご紹介したトレーラーハウスによる仮設店舗が、いよいよオープンします。  2025年8月、松波酒造若女将・金七聖子(きんしち・せいこ)さんにあらためてお話をうかがい、トレーラーハウス建設の進捗状況、仮設店舗オープンに向けた意気込みなどを、第二弾記事として公開します。クラウドファンディング「トレーラーハウス店舗による営業再開プロジェクト(https://camp-fire.jp/projects/851911/view)」にも挑戦しているので、ぜひご協力をお願いします。(取材ライター 井上みゆき) 2025年4月18日公開 “松波酒造” Vol.1はこちら↓です 能登うまれ能登そだち。“松波酒造”の日本酒で乾杯! https://note.com/notonokuni100/n/n479adeca5752

松波でカッコいいトレーラーハウスの仮設店舗を建設中!

 松波酒造は、能登町松波で日本酒・大江山を醸してきましたが、能登半島地震によって100年以上続いた酒蔵は倒壊。蔵の再建には莫大な費用がかかるため、いまだ地元での酒造りはメドが立っていません。そんな中、加越酒造さんをはじめ全国の酒蔵さんのご協力をいただき、大江山ブランドのお酒を継続的に販売できているのは、本当に有り難いことだと思っています。  けれど、大江山は松波の地で醸し、松波の食や風景とともに味わってこそのお酒です。松波で再びお酒を造り、販売し、お客様と一緒に乾杯することを目指して頑張っています。  そして!  復興への第一歩として取り組んできた仮設店舗が、2025年9月にオープンします!

トレーラーハウスを活用した仮設店舗の完成イメージ図(2025年秋オープン予定)

 選択したのは「トレーラーハウス」です。離れた場所(金沢市内)で建設してから移送できるので、能登で建設施工を行う場合と比べて時間・コストともに大きなメリットがあります。デザインの自由度も高いので、設計や施工会社さんにたくさんのアイデアとご協力をいただき、内装・外装にこだわった、めちゃくちゃカッコいいトレーラーハウスを設計してもらいました。

シャシー設置風景(撮影:2025年8月初旬/能登町松波の酒蔵跡地)

 2025年8月初旬、更地になっていた松波の酒蔵跡地にトレーラーハウスの土台(シャシー)が到着。お店のオープンが現実味を帯びてきました。ただ、仮設店舗と駐車場のスペースは整地したものの、周囲は背の高い雑草に覆われたまま…。オープンまでに何とかしなくては、と思っています。

建設中のトレーラーハウス(撮影:2025年8月初旬/金沢市内)

 金沢市内ではトレーラーハウスの建設が着々と進行中。外壁に看板が設置され、お店らしくなってきました。  外観は緑豊かな松波の風景に溶け込むデザインで、店内にはお客様と乾杯するためのカウンターも設置。ボランティアの皆さんが倒壊した蔵から救出してくれた、松波酒造の暖簾と看板も掲げます。

内装イメージ図

 ここで県内外からのお客様をお迎えし、みんなで乾杯しながら、復興に向けて歩んでいきたいと思っています。能登での酒造りを再開するのはまだ先のことになりますが、まずは拠点をつくることで地元の状況を肌で感じ、賑わいを取り戻す一助になりたいです。  当面は金沢市内のみなし仮設住宅から片道2時間以上かけた「通勤」となるため、営業日数・時間ともに限られてしまいます。ご来店の際は事前にWebサイト https://www.o-eyama.com/ やSNSでご確認ください。

引き続き全国の酒蔵の協力による共同醸造を実施

 倒壊した酒蔵からは、「災害NGO結」の協力により、瓶詰めされていた4,000本近いお酒をはじめ、貯蔵タンク、酒米約100袋などを救出。酒米は石川県小松市の加越酒造に運び込まれ、協力醸造酒としてお酒を醸しました。  加越酒造さんには今後も協力醸造をお願いしており、2025年の新酒も醸す予定です。

協力醸造をお願いしている加越酒造にて(撮影:2025年1月) 左から頭・中野さん(加越酒造)、蔵人・金七美貴子さん(松波酒造)、若女将・金七聖子さん(松波酒造)、杜氏・奥田さん(加越酒造)

 Makuakeのプラットフォームを通じた「能登の酒を止めるな!」プロジェクトにも、引き続き参画します。土田酒造(群馬県)、伊東株式会社(愛知県)、木花之醸造所(東京都)に続いて、2025年夏の第4弾では、浪乃音酒造(滋賀県)と共同醸造を行いました。この取組は「キャッシュフローを止めない」「ブランドを止めない」「流通を止めない」ことに加えて「醸造家同士の技術交流」になることも大きな収穫です。

Makuake第4弾「Te to Te」 左から、松波酒造(能登町)×浪乃音酒造(滋賀県)/鶴野酒造(能登町)×天領盃酒造(新潟県)/日吉酒造(輪島市)×藏本酒造(奈良県)

 プロジェクト第5弾はまもなくスタート。2025年度の新酒をお届けする予定です。

営業再開に向けたクラウドファンディング実施中!

 仮設店舗の開設には、トレーラーハウス設備・駐車場整備ほか付帯設備費用などで総額2,200万円以上が必要となります。有り難いことに補助金の採択もいただいていますが、まったく足りていないのが現状です。  そこで「トレーラーハウス店舗による営業再開プロジェクト」と題したクラウドファンディングに挑戦しています。 【震災復興】能登の酒蔵「松波酒造」トレーラーハウス店舗による営業再開プロジェクト - CAMPFIRE (キャンプファイヤー) https://camp-fire.jp/projects/851911/view
 協力醸造酒「大江山GO」四合瓶/一合缶、長期熟成酒「双心」などに加えて、ガンダムやゴジラのイラストレーターとして有名な開田裕治先生にご協力いただいた「鬼神の太刀ご芳名プレート」など多彩なリターンをご用意しました。2025年10月中旬終了、11月以降の発送予定です。  仮設店舗がオープンしても、酒蔵の復興までは長い道のりとなりますので、ぜひ息の長いご支援をお願いします。

松波酒造 若女将 金七聖子さん

奥能登の酒・大江山を醸す“松波酒造”

 松波酒造の創業は明治元(1868)年。初代の金七與十郎が銘柄「大江山 おおえやま」と名付け、明治36(1903)年に法人を立ち上げました。以来、先人が残した伝統を守りつつ、近年は能登の食材を使った日本酒のリキュールを生みだすなど、能登の風土と日本酒の魅力を伝えることにも注力してきました。

酒蔵の仕込み風景(撮影:2017年)

 詳しくは “松波酒造” Vol.1↓もご一読ください。 https://note.com/notonokuni100/n/n479adeca5752

松波酒造の店頭(撮影:2017年)

事業者プロフィール

松波酒造株式会社

代表者:金七 聖子(若女将) 所在地:石川県鳳珠郡能登町松波30-114

取材後記

 震災から2度目の夏。松波酒造が復興に向けて動き出したと聞いて、久しぶりに能登町を訪ねました。100年以上の長きに渡り松波酒造が日本酒を醸してきた場所は更地のまま。背の高い夏草が生い茂っていますが、一角では仮設店舗の建設が着々と進んでいました。  その一方で、酒蔵の再建はメドが立っていません。松波酒造では和釜や甑(こしき)、フネを用いた伝統的な酒造りを行ってきましたが、同規模の酒蔵を再建するには億単位のお金が必要、というのがその理由です。  では、どのようにして大江山の味わいを復活させるのか。  営業拠点となる仮設店舗を松波でオープンすることは、その答えを見つけるための第一歩だと思います。  前回も触れましたが、科学や技術が進歩しても、お酒の味を決めるのは材料や設備だけではないハズです。酒造りに携わる人、酒蔵を訪れるお客様、ともに楽しむ食、気候風土──そんな酒蔵を取り巻く風景が続いてく限り、大江山の味わいが失われることはないと思います。  酒蔵は町の賑わいと共にある存在です。地元の方々はもちろん、国内外から能登を訪れるお客様が集まり、気軽に言葉を交わせる「場」をつくることは、町の賑わいが戻ることにつながります。この地で日本酒を醸すには越えなければならないハードルが山ほどあるようですが、まずは能登の風景の中で乾杯しましょう!

井上 みゆき(コピーライター)

 メーカー宣伝部を経てフリー。本業の傍ら、酒・食・エンタメを求めて47都道府県全てを飲み歩く。関越自動車道が全線開通したころ「海沿いをロング・ドライブしたら楽しそう」という単純な動機から初めて能登の土を踏む。その後インターネットやらSNSの時代に入り、酒蔵を中心に友人が増え、さらに奥能登国際芸術祭にハマり、能登通いが加速している。

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