
能登の海を愛し、釣り人とスマイルを増やしたい”ふなづ釣具店 Fishing Base 穴水”のチャレンジ!
ふなづ釣具店 Fishing Base 穴水
更新日:2025年5月20日
釣りを通して全国から能登へ多くの人に来てほしい
私、舟津淳一(ふなづ・じゅんいち)は震災前、「のと里山海道」の穴水IC付近にあった釣具店「釣侍」の店員でした。しかし震災以後、店舗の再オープンのメドが立たたないうえ、能登半島にある釣りポイントからは釣り人の姿がなくなり、海も街も活気を失ってしまいました。
能登の海に釣り人を呼び戻すために、チャレンジしてみたい!
震災以前に母が営業していた店も地震によって全壊となりました。仮設商店街「あなみずスマイルマルシェ」がオープンするさい、母の店を復活させないか、とのお誘いがありましたが、悩んだ末に一度お断りしました。
「釣侍」再開のメドが立ちそうにない、と分かったころ、再び「あなみずスマイルマルシェ」への出店の打診をいただきました。
ちょうどそのころ、同級生が店を再建しようとして頑張っている姿に感化され、能登で釣りをするのが大好きな人たちにまた来てもらいたい! チャレンジしてみたい! という気持ちが強くなっていたんです。
母とも話し合った結果、母の新規事業として出店することが決まり、自分が店長として釣具店をオープンすることが決定!
釣具店をオープンしてからなおのこと、釣りを通して全国から能登へ多くの人に来てほしいと思うようになりました。

あなみずスマイルマルシェは、2024年10月6日金曜に開設。地震や豪雨で被害があった飲食店や釣り具店など9店舗が営業
景色も海もキレイで魚も美味しい、能登の海を知ってもらうために
能登半島の外浦(西側、輪島市や志賀町沿岸)は夢のある大物が釣れる日本海。内浦(東側、富山湾沿岸)は穏やかで豊かな海。景色も海もキレイで魚も美味しく、能登半島の海は遠方から通ってくれるファンが多い場所です。
以前勤めていた釣具店は「のと里山海道」の穴水IC近くにあり、車でやってくることの多い釣り人たちにとって、とてもアクセスの良い場所でした
しかし、現在の店がある「あなみずスマイルマルシェ」は「のと里山海道」から少し離れた穴水町の駅付近に立地しています。
能登の海を知ってもらう、穴水の釣具屋に来てもらうための情報発信をどうすれば良いか、まだ苦戦しています。
神様はいないのか。だからこそ釣りを通して能登のために。
震災をきっかけに、自分のふるさとから次々と人がいなくなりました。気づいたら周りから子育て世代が減り、今まで見ていた馴染みのある景色もなくなっていました。
そして、釣りを通して能登半島のさまざまな海へ通って目にしていた町は、さらに過疎化が進んでしまっていることを知りました。
震災を経て「神様はいない」と思うこともありました。しかし、この古き良き文化がある能登半島を守るため、復興するために釣りを通して自分にできることを日々模索しています。
些細なことでも発信を
地震によって隆起した海岸は以前とは違うものになり、釣り人に人気出たポイントもその姿を大きく変えてました。長年、能登半島の海を愛し遠方から来てくれていた人たちが再び訪れる場所になってほしい、現状を見てもらうことで自然の脅威も知ってほしい。いろいろな状況を知ってもらうためにも、一度見てほしいという気持ちです。
まったく釣りができなくなったわけではなく、新たな釣りポイントもできています。そのような情報を少しでも発信し、「能登半島の海の今!」をまずは知ってもらいたいと思い、FacebookやInstagramを通して情報発信をしています。

日々SNSに投稿して能登半島の海について発信中
能登半島の海にスマイルを増やそう!
能登半島の海を愛し、以前のように能登半島の海で楽しんでくれている人は大勢います。釣りを楽しんだ人の表情は笑顔でいっぱいです。釣りを通して能登半島の素敵な自然や景色を知り、楽しい場所だということを多くの人に知ってもらいたいと思います。
釣り好きな人の、あふれんばかりの笑顔を見てもらいたいと思い、釣果報告と共にSNSに投稿しています。能登半島の海と一緒に写る最高のスマイルを増やしていきたいと思っています。

アオリイカのシーズンは特に多くの人が能登半島の海に集まる
自然相手だからこその葛藤も抱えつつ
震災をきっかけに「能登に行こう!」「能登は怖い!」両極端の意見を見聞きします。能登半島の海を見て知ってもらいたいけれど、岩場の状態や安全の保障はまだまだ分からないことばかりです。
楽しむことに対して「自己責任で」という言葉を言わざる得ない状況に、もどかしい気持ちでいっぱいです。

震災で隆起した岩場。色の境目が震災以前の海岸線
釣りでもしようかな、と思える日々を願って
自分に余裕がない状況では「釣りでもしようかな」という気持ちにはなれない人が多いでしょう。時間ができ、生活が落ち着けば、好きだったことや興味があることに目を向けられるようになるはずです。
地元穴水で釣りが好きだった人たちとも、再び楽しい時間を過ごせるようになればいいなと願っています。

能登半島に全国から人が来て欲しいと呼びかける舟津さん
能登の海へ釣りに来て、スマイルを増やしてほしい──能登の釣りバカの願い
小学生のころに祖母が購入してくれた釣りセットをキッカケに、釣りが好きになりました。中学~大学時代は陸上に打ち込んでいたため釣りをすることはありませんでした。しかし、働いていた先に釣りバカな人が多くいたことをキッカケに再び釣り愛が復活。
穴水町は奥能登各地へ繋がる交通の要所です。輪島や外浦のほうへ行くのも、富山湾側の内浦へ行くのも、穴水町を経由します。そんな穴水町の釣具店へ、ぜひお気軽にお立ち寄りください。

年齢性別問わず釣り好きが集まる「ふなづ釣具店 Fishing Base 穴水」の店内
釣り好きなYouTuberとのコラボやイベントなども考えています。能登にスマイルを増やすため、釣りを通してできることをこれからも続けていきたいと思っています。

奥能登の釣り場などに関する相談も日々受け付けています
事業者プロフィール
取材後記
2024年3月、知り合いの船長から誘われ久しぶりに海へ出たエピソードを舟津さんから聞きました。2時間程度と短い時間ながらも、とても集中して釣りができたおかげかモヤモヤしていたいろいろな感情を忘れることができたそうです。これからどうしようと悩んでいたときに大好きな釣りに気持ちが救われたお話は印象的で、現在の舟津さんに繋がる大切な時間になったように思えました。 震災は、舟津さんにとって人生の大きな節目となり、新たな場所でのチャレンジに繋がりました。 舟津さんが投稿するSNSには、素敵な笑顔がたくさん投稿されています。これからもこのスマイルの輪がつながっていくことを応援しています!
堀 真由美(ほり・まゆみ、ライター・編集者)
大分県出身在住。 ローカル雑誌を発行する出版社を経て、さまざまな業種で広報中心の仕事をしてきました。現在は、大分の情報サイトの編集及びライター、イベントプロデュース、広報に関するアドバイスなどを行っています。