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金沢泉丘高校の生徒たちが能登の復興課題に向き合って企画した“のとりっぷ”の楽しみ方

金沢泉丘高校の生徒たちが能登の復興課題に向き合って企画した“のとりっぷ”の楽しみ方

石川県立金沢泉丘高校SGコースC班

更新日:2026年4月11日

 能登の復興は、多くの学生や子どもたちにも支えられています。金沢市にある石川県立金沢泉丘(いずみがおか)高校では、「SG(スーパーグローバル)コース」と呼ばれるプログラムを選択する生徒たちが能登の課題に向き合い、自ら行動を起こしています。その取り組みの一つである“のとりっぷ”について、生徒たちに企画の狙いや楽しみ方を聞きました。

[取材・構成 関口威人]

2年生の「探究活動」でまずキリコ祭りをテーマに

 私たちは、石川県立金沢泉丘高校SGコースC班の生徒です。石森太一(いしもり・たいち)、落合夏歩(おちあい・なほ)、川崎正照(かわさき・まさてる)、川原瑞生(かわはら・みずき)、河野心咲(こうの・みさき)、徳田実夏(とくだ・みなつ)の6人で、4月から全員3年生になりました。

 金沢泉丘高校は文部科学省から「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」の指定を受け、グローバル・リーダーの育成を図る教育が行われています。その一環でSGコースを選択した生徒は、2年生になると海外研修のほか、自分たちで課題を発見して解決に取り組む「探究活動」を行います。

 1クラスで8班にわかれ、私たちC班は昨年4月、能登にゆかりがあったり、興味があったりするメンバーで活動を始めました。能登に古くから残る祭礼や食事、文化というものを未来に残していくために、私たち高校生に何ができるかというテーマで活動しています。そのために着目したのが「関係人口」というキーワードでした。

 能登地方は人口減少や過疎化、少子高齢化が進んでいて、地域の経済が弱体化している現状を、ヒアリングやインタビューを通して実感しました。その解決のために、まずは能登を訪れる人を増やして、経済を少しでも活性化させることを目標にしました。その地域に住む定住人口の増加に働きかけるのは高校生ではちょっと現実的ではないと考え、まずはアプローチしやすい「知ってもらう」という段階から始めようと考えました。

 まず第一弾としてテーマにしたのが「キリコ祭り」です。能登のキリコ祭りは毎年決まった時期に能登全域の200カ所以上で行われます。ある地域の祭りを気に入ったら「来年も行こう」と思ったり、「別の地域の祭りにも行ってみよう」と思ったり、継続的な訪問が関係人口につながると考えたからです。

 そこで、昨年8月19日に金沢市内で「キリコ未来工房」というワークショップを開催しました。1メートルくらいの小さなキリコを手づくりして、参加者に実際に担ぐ体験をしてもらいました。さらに志賀町から講師を招いて、能登の状況やキリコ祭りについて語っていただきました。実はメンバーの一人の祖父なのですが、キリコの担ぎ手が年々減り、震災でそれが加速してしまっていることを教えてもらいました。

 参加者は金沢市内の大学生や高校生を対象にしました。大学生は時間的な余裕もあり、若い世代が能登に行くことで新しい風になればいいと考えたからです。ただ、このイベントを通して見えてきた課題は、私たち高校生が集められる人数には限りがあることでした。当初は20人ほどを想定していたのに、集まったのは10人ほど。しかも自分たちが声をかけた友人・知人が多くなってしまいました。また、イベントという形だと少人数で一度きりになってしまうので、より継続的かつ多くの人の参加が見込める活動にしたい。そんな反省を生かして次に“のとりっぷ”という企画を考えました。

2025年8月の「キリコ未来工房」のために生徒たちが手づくりした高さ約1メートルのキリコ
2025年8月の「キリコ未来工房」のために生徒たちが手づくりした高さ約1メートルのキリコ

能登の観光地を10体のキャラクターで擬人化

“のとりっぷ”は珠洲市や輪島市をはじめとした奥能登の観光地を擬人化・キャラクター化したスタンプラリーのようなイベントです。

 各地の観光施設などに張ったポスターにあるQRコードをスマホで読み取ると、AR(拡張現実)機能でキャラクターが出てきます。そのキャラクターと一緒に撮った写真をハッシュタグ「#のとりっぷ」をつけてインスタグラムなどのSNSに投稿。全10体のキャラクターの写真、つまり10カ所を回ったことがわかれば、私たちが能登で購入して詰め合わせた「お土産セット」を先着1名にプレゼントします。それ以外の全員には、参加賞として「のと特別観光大使」に任命しますという形で名刺のデザインのデータをお送りする予定です。

 キャラクターづくりはデザインの得意なメンバーが担当しました。能登の有名な場所を選んで、さらにその地域のものをデザインに取り入れています。例えば輪島・名舟(なふね)町の「御陣乗太鼓(ごじんじょうだいこ)」なら太鼓を叩く鬼の頭が海藻になっていたり、同じ輪島の「白米千枚田(しろよねせんまいだ)」なら早乙女(田植えする女性)のすげ笠が棚田になっていたり、能登町の「九十九湾(つくもわん)」ならドーム状の「ツクモリウム」というキャラできれいな海を強調したり。能登の里山里海などの風土を感じられるように工夫しました。

能登の代表的な観光地をイメージして作成したキャラクター
能登の代表的な観光地をイメージして作成したキャラクター

能登に行ったことがない人が行くきっかけに

 4月から各施設を回ってポスターの張り出しやチラシの設置をお願いしています。道の駅や商業施設が多いのですが、レジ横にポスターを張ってもらうことで“のとりっぷ”の参加者がついでにお買い物をしてくれる効果もあるかなと。また、のと里山空港では売店2カ所と観光案内所に宣伝のチラシを置かせてもらいました。金沢駅など人が集まりそうな場所にも置かせていただけないか検討しています。

 能登全域を回るとなったら結構ハードルが高いかもしれませんが、収集系のゲームが好きな人はもちろん、普段から能登には行くけれど県外に住んでいるよという方にあらためて能登を回ってもらったり、能登の場所は知っているけれど行ったことがないという人が実際に行くきっかけになったりすればうれしいです。

 私たちはもうすぐ受験生になってしまうので、ゴールデンウィークで活動はいったん区切りを付けます。7月には校内で発表会があり、“のとりっぷ”の成果を英語で発表する予定です。私たちの探究活動自体は終わってしまいますが、SGコースは次の代にも続いていくので、こうした取り組みを引き継いでもらえたらいいなと考えています。

 今回、能登に親族がいるメンバーもいれば、まったく縁がなくて「地震があったんだな」くらいの知識や思い入れしかなかったメンバーもいます。でも、活動の話し合いを通して能登を知らない人の意見も取り入れ、新しい視点を得ることもできました。そうやって人が関わることで、また能登の街に活気が生まれてほしいと思っています。

“のとりっぷ”の投稿の例。能登町の九十九湾をイメージした「ツクモリウム」と生徒たち
“のとりっぷ”の投稿の例。能登町の九十九湾をイメージした「ツクモリウム」と生徒たち

“のとりっぷ”ポスター掲示場所

開催期間

  • 4月1日〜5月6日

取材後記

 取材はオンラインで行いましたが、生徒たちはどんな質問にもすぐにハキハキと答えてくれて「さすが泉丘高生」と思わされました。キリコの模型も観光地のキャラクターの完成度も高く、キャラは10体を1週間で考えたのだとか。

 一方、LINEで画像共有してもらった「イカキング」にまたがってはしゃいだり、バーベキューでお肉をほおばったりする姿は今どきの高校生そのもの。そんな彼ら、彼女らの感性と行動力がどんな結果をもたらすのか、楽しみに報告を待ちたいと思います。

 ちなみに私は新聞社時代、新人として入った社員寮が高校に比較的近く、「泉が丘寮」と呼ばれていたのでなおさら親近感があります。ほぼ20年前なので、今回のメンバーはまだ生まれてもいないころ。時代の流れを感じてしまいますが。

事業者プロフィール

石川県立金沢泉丘高校SGコースC班

所在地:石川県金沢市泉野出町3丁目10−10

記者プロフィール

関口威人

関口威人(ジャーナリスト)

1997年、中日新聞社に入社し、初任地は金沢本社(北陸中日新聞)。整理部記者として内勤を終えたあとに片町や香林坊で飲み歩き、休日は能登や加賀をドライブで走り回りました。現在は名古屋を拠点とするフリーランスとして、主にヤフーニュース東洋経済で防災や地域経済などについて執筆しています。