株式会社Another works(本社:東京都港区、代表取締役:大林尚朝)が運営する総合型複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」は、一般社団法人能登乃國百年之計(所在地:石川県金沢市、代表理事:林 俊伍、以下「能登乃國百年之計」)と連携し【能登復興 × 複業プロジェクト】を行っています。
本プロジェクトは、能登の復興のために自分のスキルを活かして複業をしたい人と、ノウハウや人員不足で悩んでいる能登の事業者をマッチングすることで、100年続く能登に向けた持続的なまちづくりを目指します。
今回、本プロジェクトの事例として、以下案件で活躍されている複業人材と依頼者の感想をご紹介いたします。
▶【プロボノ】能登の「住」を支えるための、業務見直しアドバイスをください!※募集終了
複復PJ活動事例:能登不動産株式会社/業務フロー改善・kintone構築支援[活動レポート]
▼依頼者
玉地正幸(たまち・まさゆき)
能登不動産株式会社 代表取締役
能登町宇出津出身。能登町唯一の不動産屋である能登不動産を事業承継。
▼プロボノ人材
白井達也(しらい・たつや)
株式会社AsetZ 執行役員COO
埼玉県出身。カスタマーサポートやバックオフィス領域に強みを持ち、業務改善のコンサルティングに従事。
2024年1月の能登半島地震直後、奥能登で唯一の専業不動産屋として地域の生活基盤を支えてきた“能登不動産株式会社”は、未曾有の事態に直面していました。たった2名で運営する会社に殺到する電話、アナログな業務フロー。限界を迎えた現場を救ったのは、遠く離れた地からプロボノとして駆けつけた一人のビジネスパーソンとの出会いでした。
[取材・構成 伊藤璃帆子]
震災後のパニック。月100件の電話と「紙」の限界

震災からわずか3、4日目。能登不動産の代表、玉地正幸(たまち・まさゆき)さんは事務所を開け、問い合わせへの対応を始めました。しかし、そこに待っていたのは「住む家がない」「物件が倒壊した」「帰れないので家の様子を見てきてほしい」といった、切実かつ膨大な、悲鳴に近い声でした。

電話の数は月に100件を超え、急遽アルバイトを2名雇い入れましたが、現場はパニック状態に。140室に及ぶ管理物件の状態や、誰がどこまで対応したかという履歴は、すべて玉地さんの頭の中と、急激に増え続ける紙のファイルの中にしかありませんでした。
初めて電話を取るスタッフは経緯を知らないため、疲弊したお客様に同じ話を一から聞き直さなければならず、「被災された方のストレスを増やしてしまう」と、玉地さんは強い危機感を抱いていました。
プロボノに託した、代表の「頭の中」の可視化

「通常であれば、物件を借りたい人と貸したい人がいて、大体のことは頭の中と紙の記録で何とかなる業務量なんです」と語る玉地さん。しかし、震災以降は入居者だけではなく、全国から集まるボランティアや工事業者など、客層も目まぐるしく変わっていきました。


玉地さんが能登復興 × 複業プロジェクトを通じてプロボノに求めたのは、単なる作業の代行ではありませんでした。新しく入ったメンバーに迷わず業務を任せるため、自分の頭の中にしかない情報を「仕組み」として外に出すこと。「情報のデータ化が急務だった」と語る通り、紙の業務フローの限界を超え、次の一歩を踏み出すためのパートナーを必要としていたのです。
現地に赴き、温度感を知ることから始める「伴走支援」

この公募に応じたのは、埼玉を拠点にDX支援を行う白井達也(しらい・たつや)さんでした。白井さんは「自分のスキルを、最も困難な状況にある被災地で役立てたい」という想いを持っていましたが、システムの導入を単なる遠隔作業とは捉えていませんでした。
「たとえ同じ業種であっても、環境や文化が違えば課題も違います」と語る白井さんは、実際に能登の現地へ赴くことを重視しました。オンライン会議の画面越しではわからない、被災した事務所の空気感や、日々変化する現場の優先順位。3回にわたる現地訪問を通じて、白井さんは能登不動産の現状を深く理解し、単なるシステム構築ではない、血の通った「伴走支援」をスタートさせたのです。
クラウドプラットフォーム構築がもたらした「2、3割の業務削減」

白井さんが現職のメンバーも巻き込みながら構築したkintoneシステムにより、物件の状態や顧客対応の履歴がデータ化され、社員間の共有は劇的にスムーズになりました。「自分がこんなに仕事を抱え込んでいたのかと驚きました」と語る通り、玉地さんの業務負荷は約2〜3割も軽減。書類を棚まで探しに行く時間は消え、スタッフが現場の判断で動ける範囲も広がりました。

しかし、プロジェクトを支えたのはシステムだけではありません。玉地さんは、白井さんに能登を好きになってもらいたい一心で、地元の飲食店へ何度も案内しました。「白井さんに能登の美味しいものを食べてほしい」という玉地さんの想いに、白井さんは「能登は海の幸、山の幸、お肉もすべて美味しくて、いつも仲間や家族に自慢しているんです」と満面の笑み。


「自分たちだと気づかない魅力を喜んでくれる外からの視点は、不動産を探しに来られたお客様に地域の良さを伝える手助けにもなる」と玉地さん。無機質なシステム構築の裏側で、美味しい食事を共にしながら、確かな「人と人の信頼」が積み上がっていったのです。
能登復興 × 複業プロジェクトが繋ぐ、変化と可能性に満ちた共創の場

能登不動産の事例は、デジタル化が決して冷たい「効率化」だけではないことを教えてくれます。それは、代表者の重荷を分け合い、スタッフに自信を与え、そして地域外の応援者と美味しい食事を分かち合う「余裕」を生み出す手段です。
一人で抱え込み、限界を感じている事業者の皆さん。まずは「頭の中」にある想いや課題を、外の誰かに話してみるのもいいかもしれません。そこから生まれる新しい視点と信頼関係が、100年続くまちづくりへの、最も温かく力強い一歩になるはずです。
▶シロシル能登
みんなが住みやすい町づくりを進める“能登不動産”
取材後記

取材の初めに、白井さんに今回応募して活動した一番の良さをお聞きしたところ、開口一番「食べ物がどれもおいしくて、こんな場所はなかなかありませんよ!」と話してくれました。それを受けて玉地さんも「白井さんに能登の美味しいものを食べてほしい、魅力を発信してほしい」と何度も口にしていたのが印象的でした。システムという無機質なものを構築する過程で、それ以上に温かい「人と人の信頼」が積み上がっていました。
能登復興 × 複業プロジェクトは、スキルを持つ都市の人材と、未来を切り拓く能登の事業者を繋ぎ、被災地の「生きる基本」を支える挑戦を続けています。

