ロゴ
複復PJ活動事例:能登の未来を拓く「異文化」の視点 漁業改革に挑む起業家と、海外経験を持つプロボノが共創した関係人口創出プログラム

複復PJ活動事例:能登の未来を拓く「異文化」の視点 漁業改革に挑む起業家と、海外経験を持つプロボノが共創した関係人口創出プログラム

うみのち株式会社

更新日:2026年1月20日

 株式会社Another works(本社:東京都港区、代表取締役:大林尚朝)が運営する総合型複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」は、一般社団法人能登乃國百年之計(所在地:石川県金沢市、代表理事:林 俊伍、以下「能登乃國百年之計」)と連携し【能登復興 × 複業プロジェクト】を行っています。

 本プロジェクトは、能登の復興のために自分のスキルを活かして複業をしたい人と、ノウハウや人員不足で悩んでいる能登の事業者をマッチングすることで、100年続く能登に向けた持続的なまちづくりを目指します。

複業クラウド | 能登復興 × 複業プロジェクト

 今回、本プロジェクトの事例として、以下案件で活躍されている複業人材と依頼者の感想をご紹介いたします。

【案件】能登の暮らしや漁業を体験し関係人口を増やす体験型プログラム事業の立ち上げを研修企画やWeb運用などでサポートできる方募集!※募集終了

複復PJ活動事例:うみのち株式会社(設立中)/研修企画・Web運用サポート[活動レポート]

▼依頼者
藤田 聡(ふじた・さとし)
うみのち株式会社
外資系IT企業執行役員を経て、能登の漁業改革と関係人口創出事業の立ち上げに挑む起業家。

▼プロボノ人材
佐々木沙枝(ささき・さえ)
コミュニケーションアドバイザー
事業構想・ブランド・広報・採用など、コミュニケーション領域について、思考整理や壁打ち、意思決定の伴走支援を行う。能登の体験型プログラム企画設計に貢献。

[取材・構成 伊藤璃帆子]

外資系IT企業から能登の漁業へ。起業家・藤田 聡氏の挑戦

うみのち株式会社(設立中)代表 藤田 聡氏
うみのち株式会社(設立中)代表 藤田 聡氏

 外資系IT企業の執行役員というキャリアを辞し、能登の漁業改革に人生を賭けることを決めた、うみのち株式会社(設立中)代表の藤田 聡(ふじた・さとし)氏。藤田氏が惚れ込んだのは、能登の良質な漁場と漁師たちの優れた技術でした。しかし、能登の一次産業は、担い手不足、高付加価値販売のための市場づくり、そして震災後のサプライチェーン変化への対応という、構造的な課題に直面しています。

 藤田氏は、漁師の専門性が十分に評価されない、これらの構造的課題を乗り越え、「頑張った人が報われる社会」を能登の漁業から作りたいと考え、第一弾として関係人口創出事業の立ち上げを決意。

 都市の人々が能登の暮らしや漁業を体験し、継続的に関わる仕組みを作ることで、能登のファンを増やし、結果的に担い手不足の解消や販路拡大に繋げようと考えています。

 この事業の核となる「体験型プログラムの企画設計」を外部の専門家に委ねるため、藤田氏は「能登復興 × 複業プロジェクト」でのプロボノ募集に踏み切りました。

依頼者・藤田氏が語る、プロボノに求めた「自分にはない視点」

体験型プログラムのワンシーン。漁師さんが用意してくれた魚料理を囲んで
体験型プログラムのワンシーン。漁師さんが用意してくれた魚料理を囲んで

 藤田氏がプロボノに求めたのは、単なる作業代行ではなく、自身の事業に新しい視点をもたらす「異文化」の知見でした。募集背景には、「都市の人々が、能登の自然、生産者と関係を構築することにより、都会にいながら能登を故郷として繋がり、更に生き生きと豊かに暮らしていける社会」を目指すという、壮大なビジョンを掲げています。

 そのなかで、佐々木さんを選んだ決め手は、彼女が持つ「自分にはない視点」だったと藤田氏は語ります。

「絶対食べてほしい」とイチオシの、脂の乗ったトロ
「絶対食べてほしい」とイチオシの、脂の乗ったトロ
漁師さんが焼いてくれた、厚切りの白身魚
漁師さんが焼いてくれた、厚切りの白身魚

「この事業は新しい価値観を提示することが重要で、人にどう受け入れられるのかは僕だけの視点では不十分だと感じていました。エントリーしてくれた佐々木さんは、海外在住の女性。僕とはまったく違う境遇の方と協業することで、広い視野を獲得できることを確信しました」

 特に藤田氏は、日本における「女性が活躍できる環境づくり」の遅れを意識しているといいます。

「働きがいのある会社ランキング常連だった前職の会社では、世界中のバックグラウンドが違う人たちが有機的に交わり、多様性がもたらす力を強く実感してきました。能登での事業が、女性をはじめとした多様な方々の、『元々の価値』が十分に解放される社会に貢献できればと思っています。日本文化の先進地、能登から次の未来を作りたいのです」

 佐々木さんの視点をお借りすることで、事業を多角的に検証し、従来の漁業のイメージを刷新するような、新しい価値観を提示したいという強い意志があるのだそう。

プロボノ人材・佐々木さんが語る、能登に感じた一次産業の可能性

 プロボノとして藤田氏のプロジェクトに応募した佐々木さんは、海外(北米)と日本を拠点とするコミュニケーションアドバイザーです。事業構想・ブランド・広報・採用など、企業のコミュニケーション領域全般について、思考整理や壁打ち、意思決定の伴走支援をしています。

 彼女が能登のプロジェクトに関心を持った背景には、自身の経験と、一次産業への思いがありました。

「私は宮城出身で、能登とは直接的なご縁はありませんでしたが、震災というところでは、能登と同じように大変だった時期があったし、何かしたいという思いを抱いていました」

 佐々木さんは、海外から日本を見ることで、日本の魅力が再確認できたと語ります。さまざまな職業がAIやテクノロジーに代替されるといわれるなかで、特に一次産業については大きな可能性を感じているのだそう。

「もともと能登の自然と里山が育んだ恵みには、とても魅力を感じていました。自身が持つプログラム開発の企画スキルを活かし、『100年続く事業』の土台作りに貢献したいという想いが、応募の原動力となりました」と佐々木さん。

共創が生んだ「新しい関わり方」:テストツアー企画の成果

ツアーで訪問した「ふくべ鍛冶」
ツアーで訪問した「ふくべ鍛冶

▶シロシル能登
能登の暮らしを支えた野鍛冶が、全国へ、世界へ。“ふくべ鍛冶”

 佐々木さんがプロボノとして藤田氏と共創し、具体的に形にしたのが、都市と能登を繋ぐ体験型プログラムのテストツアー企画です。

伝統鍛冶の技と道具づくりなどを学ぶ
伝統鍛冶の技と道具づくりなどを学ぶ
包丁の切れ味に感動する藤田氏
包丁の切れ味に感動する藤田氏

「現地に来てもらうことに成功したとしても、そこから定住してもらうのは、なかなか難しいですよね。住めないけれど、現地に来ることで得られることがある。不定期でも関わる、通う。そういうことができればいいなと思っています」

 佐々木さんの提案は、「定住の人と通いの人が、無理なく協業する」という、多様な関わり方を許容する仕組みづくりです。

訪問先2軒目は数馬酒造
訪問先2軒目は数馬酒造

▶シロシル能登
100年先を想う“数馬酒造”の「酒蔵の領域を超えた」使命

▶能登復興 × 複業プロジェクト活動事例
数馬酒造株式会社/社史を形にするライター

能登の水と米を活かす酒造りについて話を伺う
能登の水と米を活かす酒造りについて話を伺う
多くの人から応援メッセージが貼られたボトル
多くの人から応援メッセージが貼られたボトル

 藤田氏もまた、この協業を通じて、事業の可能性が広がったことを実感しているといいます。

「資料を作るとき、自分一人だけだとつまらないものになってしまう可能性があります。佐々木さんが女性目線、海外目線、都市目線、親世代目線、同世代の目線、等々で教えてくれたのは大きいです」

 二人の共創は、単なるツアー企画という成果物にとどまらず、藤田氏が目指す「一回来て終わりではなく、人生に能登を組み込む機会を創出したい」というビジョンを具体化する一歩となりました。藤田氏は、佐々木さんのような人材が「継続的に関わる形」を模索し、リモートでもできる仕事を作り出すことで、能登への関わり方を広げていきたいと考えています。

能登復興 × 複業プロジェクトが繋ぐ、変化と可能性に満ちた共創の場

藤田氏と「鰤-1グランプリ2025」でグランプリを獲った「日の出大敷」の中田洋助氏

▶シロシル能登
「能登はこれから面白くなる」“日の出大敷”五代目網元が復興にかける心意気

 今回のプロボノマッチングは、能登の漁業という伝統的な産業に、都市の異業種人材の知見を注入し、新しい価値を生み出す好例となりました。

操舵室を見せてくれた中田氏
操舵室を見せてくれた中田氏
漁師たちの仕事を目の前で見学できる貴重な体験
漁師たちの仕事を目の前で見学できる貴重な体験
:取材時はブリのシーズン。命をいただくことの重みを感じて
取材時はブリのシーズン。命をいただくことの重みを感じて
漁船の周りを舞う鳥たち
漁船の周りを舞う鳥たち

「漠然とした課題はあっても、何から手をつけたらいいかわからない事業者さんはたくさんいらっしゃるかもしれません。その壁打ち相手になる役割でしたが、暗中模索で、まだ何も定まっていないなか、その時々で出会う人々、関わりによって事業構想やその後の展開が変わっていく場面もあって、その即興性がとても面白いと感じました」と佐々木さん。

 その言葉は、能登復興 × 複業プロジェクトを通じたプロボノ活動の意義を端的に示しています。事業の初期段階で、外部の専門家が関わることで、当初の計画にとらわれず、関わる人々の視点によって事業が多角的に変化し、他の展開へと繋がっていく可能性を秘めているのです。

沖から上がったあとは、漁師メシ。朝獲れの刺身
沖から上がったあとは、漁師メシ。朝獲れの刺身
おいしさとありがたさを噛み締める朝食をみんなで体験
おいしさとありがたさを噛み締める朝食をみんなで体験

 藤田氏と佐々木さんの共創は、能登の未来を支える新しい関係人口の形、そしてプロボノマッチングが持つ無限の可能性を示しています。これから能登復興 × 複業プロジェクトに興味を持つ事業者やプロボノ人材に、能登への多様な「関わりシロ」として参考になるはずです。

取材後記

複復PJ活動事例:能登の未来を拓く「異文化」の視点 漁業改革に挑む起業家と、海外経験を持つプロボノが共創した関係人口創出プログラム

 外資系IT企業の執行役員という華やかなキャリアから一転、能登の漁業というまったく異なるフィールドに飛び込んだ藤田氏。その挑戦の背景には、この地の漁業を「100年続く産業」にしたいという強い使命感がありました。

 そして、その熱意に応えたのが、海外での生活を通じて日本の魅力を再認識し、自身のスキルを地方創生に活かしたいと考える佐々木さんです。

 取材の道中、地元の方が印象的なことを話してくれました。

「世の中には女性のアイデアから生まれたものがたくさんあります。第一次産業は男性社会のイメージが大きいけれど、女性が入ることできっと新しい価値が生まれるはず。ワクワクするし、素敵なことだと思います」

 二人の共創が生み出したのは、単なるツアー企画ではなく、「人生に能登を組み込む」という新しい関わり方です。

 能登復興 × 複業プロジェクトは、スキルと熱意を持つ都市の人材と、未来への挑戦を続ける能登の事業者を繋ぎ、能登の復興と持続的な発展に向けた確かな一歩を踏み出しています。

事業者プロフィール

うみのち株式会社

代表者:藤田 聡 所在地:石川県鳳珠郡能登町

記者プロフィール

伊藤璃帆子

伊藤璃帆子

コラムニスト&フォトグラファー、たまに料理人。デジタルマーケティング会社勤務を経て、コンテンツプランナーとして独立。企画から制作までワンストップで手がけるマルチクリエイター。また、料理家としても活動中。ケータリングユニットを主宰し、アートな食空間を提供している。

複復PJ活動事例:能登の未来を拓く「異文化」の視点 漁業改革に挑む起業家と、海外経験を持つプロボノが共創した関係人口創出プログラム - シロシル能登