今回は、珠洲市を中心に、奥能登で 『働く』 の可能性を広げることに取り組む“合同会社CとH”のCEO伊藤紗恵(いとう・さえ)さんと、COOの橋本勝太(はしもと・しょうた)さんについてご紹介します。
奥能登でチャレンジしたい人が集まる「応援し合えるコミュニティ」を目指して
私、伊藤紗恵(いとう・さえ)は、合同会社CとHの代表をしています。
合同会社CとHの主要な事業である「奥能登ブリッジ」は、珠洲・高岡・金沢の3拠点で展開する24時間利用可能なコワーキングスペースです。単なる作業場所ではなく、地域内外の人が集まれるコミュニティを作り、そこから新しい取り組みを創出することを目的にしています。そうして集まった人たちがコラボして少しでも地域が発展してくれたら嬉しい、そんな想いで運営しています。現在、奥能登ブリッジには約100人のコミュニティメンバーが集まり、それぞれが持つ専門性や地域とのつながりを活かして、お互いの挑戦を支え合っています。
誰かがやりたいことを話したときにみんなが協力してくれる。そんな応援し合えるコミュニティができています。

女性のキャリアの選択肢を広げる。ガラスアクセサリー工房から始まる「生業づくり」
奥能登ブリッジでは、コミュニティづくりと並行して「地域に根ざした生業づくり」にも取り組んでいます。現在力を入れているのが、ガラスアクセサリーの工房運営と女性ワーカーの育成です。
このプロジェクトのきっかけとなったのは、2024年1月の能登半島地震ののちにうかがった、福島県南相馬市にあるガラスアクセサリー工房への見学でした。2011年の東日本大震災からの復興の現場で女性たちが生き生きと働く姿に触発され、アクセサリー制作を核とした女性の働く場づくりを能登でもスタートさせました。
全国各地における女性のキャリア選択肢の少なさは深刻な問題であり、ここ奥能登も例外ではありません。実際のデータを見ても、地域からの女性の流出率は男性を上回っており、その主な理由は「やりたい仕事が見つからない」ことにあります。
それならば、地域の女性たちが心から「素敵」と感じられる仕事を創り出そう、そんな想いをもとにガラスアクセサリー工房を立ち上げました。
この工房では、子育てと仕事の両立を可能にする柔軟な働き方を重視しています。女性一人ひとりのライフスタイルに合わせた勤務が可能になる仕組みを作ることで、地域に新たな産業を根付かせ、持続可能な生業として育てていくことを目指しています。
また、合同会社CとHでは、奥能登ブリッジで活躍してくれる新たな挑戦者、コミュニティメンバーを募集しています。
とにかく一緒にワクワクしてくれる人、求む!
○ 奥能登で新しいことを始めたい挑戦者を募集
奥能登ブリッジが最も求めているのは、「ここでチャレンジしてみたい人」です。学生から社会人まで幅広く、観光のような短期滞在でもなく、移住のような長期滞在でもない、「中期的な滞在」をしながら何かにチャレンジできる環境を整えています。
例えば漁業をやりたい人、地域のおばあちゃんと事業をしたい人、のようにもっといろんな事業をしたい人たちが集まってくれたら、また雇われるというよりは、奥能登ブリッジを拠点にして新しいことを始めたい人に来てほしいと考えています。
関わり方の選択肢は多岐にわたります。東京で会社員をしながら事業のタネを探している人、家族は東京に残しつつ平日は能登で地域の仕事に取り組む人、長期休暇を活用して能登に滞在する大学生など、多様なスタイルで関わるメンバーが着実に増えています。
私たちが特に求めているのは、奥能登ブリッジが大切にしている価値観である「周りと応援し合う」「自分の意思を持つ」に共感してくださる方です。また、地域にいる時間が信頼関係の構築に直結するため、意識的に能登にいる時間を確保できる人を特に歓迎しています。
○ コミュニティメンバー・企業スポンサーを募集
現在約100人のコミュニティメンバーをさらに拡大中です。会員になることで、コワーキングスペースの利用が可能になり、また東京にいながら能登の現状などインターネットでは決して手に入らない一次情報に触れられるようになります。半年に一回程度の頻度で訪れる方もいますが、みな必要なタイミングで各々が得意な形で関わってくれます。
また、奥能登で社員研修を行いたい企業や、挑戦する人たちと一緒に何かを取り組みたい企業スポンサーも募集しています。
“奥能登ブリッジ”について
合同会社CとHの代表伊藤は、母が珠洲出身というご縁から能登に関わるようになりました。東京で生まれ育ち、震災の2〜3年前から能登で仕事をする機会を得るなかで、能登で出会った人たちがこの地域でもっと成長できるようにしたいという想いや、若い人たちの可能性に魅力を感じたことがきっかけで奥能登ブリッジを立ち上げました。
奥能登はもともと震災前から過疎化が進んでいた、ある意味でこれから日本が直面する課題の最先端地域です。それは決して喜ばしいことではありませんが、その分やれることがあるし、課題解決のヒントもここにあるのではないかと考え、日々活動しています。
また震災によって多くのものが失われた一方で、そこから新しいものが生み出される土壌にもなったと前向きに捉え、将来的には奥能登ブリッジをインキュベーション拠点として発展させることを目指しています。
現在は寮のような共同生活環境も構築中です。昔でいう同じ釜の飯を食べるような環境があると、挑戦や失敗に一歩を踏み出しやすくなるという考えのもと、さらなるコミュニティの深化を図っています。

取材後記
伊藤紗恵さんや、COOの橋本勝太さんとお話させていただくなかで最も印象に残ったのは、彼らの奥能登への情熱や、この土地で新しい何かを始めることに対して強いワクワク感を抱かれていることでした。
お話させていただくなかで、災害を経てもなお奥能登というフィールドがいかにすばらしい場所であるかを沢山教えていただき、都会にはない可能性を感じました。
人口減少が進み、災害により経済活動の空白が生じざるを得なかった場所だからこそ、新しいことにも挑戦しやすい。近い将来、日本や世界が直面する課題に、「今」直面しているからこそ、ここで挑戦することこそが日本や世界に通用する勝ち筋になりうる。奥能登ブリッジは、そんな奥能登への愛と少しの野心を感じられる素敵なコワーキングスペースであり、インキュベーション施設でした。
またライターかつ学生の私自身も、6月中旬ごろから長期滞在させていただこうと考えています。学生や若い世代が何かに挑戦しやすい、そして応援してもらえる環境であるということが、取材のやりとりという決して長くはない時間の中でも鮮烈に伝わってきました。
奥能登で何かに挑戦してみたい方、ワクワクに突き動かされている素敵な挑戦者たちの集う奥能登ブリッジに、ぜひ一度足を運んでみてください!!

