今回は、キッチンカー事業で能登復興に取り組む「狩女の会」代表・福岡富士子(ふくおか・ふじこ)さん(通称:ジビエふじこさん)にお話を伺いました。
狩女の会代表が「キッチンカー」で再始動
私(福岡富士子、ふくおか・ふじこ)が代表を務める「狩女の会」(かりじょのかい)は、女性ハンターやジビエ料理好きの女性が集まり、狩猟を通して得られたジビエ肉を有効活用し、地域経済の活性化や環境問題を解決することを目標に活動しています。2016年に5名のメンバーから始まり、今では、全国で50名ほどに成長しています。
本日もウェルネスラボ金沢駅西店駐車場にて、キッチンカーで能登の食材をふんだんに使った天津飯、ジビエソーセージなどを販売していました。


キッチンカービジネス以外にもさまざまな事業を展開してきました。
女性ハンターでつくる「狩女の会」の代表を務める一方で「isica(イシカ)」という革細工のブランドも立ち上げています。猪や鹿の革を使った工作の楽しさを知ってもらうため、革細工教室の先生の顔も持っています。

いしかわジビエ利用促進研究会ジビエ利活用アドバイザーでもあり、ハンターでもあり、ジビエ商品開発コンサルタントとしてアドバイザーの役割も担っています。
農家民宿「富士SUN」開業から2ヶ月で倒壊
2023年11月、築47年の空き家を改装した農家民宿「富士SUN」を穴水で開業しました。
ジビエやカキ料理を提供する飲食店やシェアスペースとしてオープンし、営業が軌道に乗り始めた矢先のことです。
2024年1月1日、能登半島地震が発生しました。
震度6強の揺れで、木造2階建ての民宿は1階部分が押し潰され、倒壊しました。
近くの住居にいた私と息子は揺れがおさまって、なんとか外へ出ると、いつも家の近くは土砂崩れがあったり、あるはずの道が地震でなくなっていました。逃げるための道が閉ざされて周りの様子も暗くてよくわからないし、近所の皆もパニック状態で、どうしたらいいのかわからなかった。
ハンターとしてテレビ番組“世界一受けたい授業”に出演するなど、メディアの私は明るいイメージがあるかもしれません。ただ、あの時期は怖くて、しばらく眠れませんでした。
復興への新たな歩み
全壊した農家民宿を更地にし、その場所にトレーラーハウスやユニットハウス、キッチンカーを設置しようと考えましたが、今は無残な姿になった倒壊建物の町の風景を早く解体するための工事関係者や支援者の方々の休息場所が必要だと感じ、自分の事業再建より先に工事関係者の方々に土地を提供しました。再建するのはその後だと思い準備に入りました。
「地震が来ても、もう全壊しない、移動できる宿を作りたい。そこを拠点に、炊き出しをはじめ能登の復興支援ができるよう立て直したい」
そう考え「富士SUN」を能登復興のために提供する場として生まれ変わらせたいと感じ、まずはキッチンカー富士SUNを始めとし稼働型のフードトラックNOTO NOMAD取得のために穴水を拠点にした奥能登の復興支援活動を行うプロジェクトを立ち上げたのです。

再建プロジェクトへのご支援を受けはじめ、震災から3ヶ月後にはキッチンカービジネスをスタートさせました。(現在も再建プロジェクトのためのご支援を受付中。)
詳細URLは一番下に記載しています。

から揚げやあげたこ焼きを販売するNOTO NOMADのキッチンカー
当初奥能登の移住者とともに「NOTO NOMAD」を結成し、奥能登や他地域でも、仲間たちに貸出し、キッチンカーを走らせていました。
現在は当時の仲間が統括マネージャーとして合同会社 狩女の会の社員(役員)になるためアルバイトとしてNOTO NOMADを走らせています。
営業場所と人材を募集中!
キッチンカーでは、能登産の食材を使う商品を販売しています。
能登の良さをもっと知ってもらうために、キッチンカーの新しい営業場所を募集しています。

営業場所を提供してくれそうな企業のもとへ直接出向いたり、SNSでも営業場所や提供している商品の告知などを続けています。

キッチンカーで提供している商品は「ジビエソーセージ」や「能登塩を使ったからあげ」のほかにも「穴水産蒸し岩牡蠣トッピングのせ天津飯」「ジビエハンバーガー」「ワッフル」などラインナップは盛りだくさん。
話題性の高い食材の特性を活かした商品展開を行っています。
平日はお昼~夕方の時間帯、企業や自治体に出店することが多く、土日は全国区で時間帯問わず販売できる場所を募集しています。
会社や商業施設の前で出店していれば、地域内外から注目度を得られてその場所自体も栄える、と考えています。
能登の食材が認知されて広まることはもちろん、こちら側だけでなく、場所を提供する側にとってもプラスになるはずです。
300坪の敷地を活用してビジネスを展開できる方募集中
私が所有する穴水川尻の「狩女の広場」300坪の広大な敷地を有効活用し、イベント空間の創出にご協力いただける事業パートナーを募集中です。
地元の皆様から県外の方まで幅広くお楽しみいただけるためのアイディアやスキルをお持ちの方を求めています。
特に歓迎する経験・スキルは
・イベントの企画・運営
・PR/広報業務
・デザイン業務(ポップ制作等)
・飲食店キッチン業務
上記の経験をお持ちの方は特に歓迎します。
経験者ではなくとも、意欲があればぜひご相談ください。
具体的な活用方法やビジネスモデルについては、パートナーの方のアイディア次第です。
周囲の人々を巻き込みながらプロジェクトを推進できる方と事業を展開していきたいですね。
受け身ではなく、自ら積極的に行動を起こせる方だといいかもしれません。
取材後記
パワフルで目覚ましいご活躍が印象的なふじこさんですが、実は震災以来能登には近づけていないと打ち明けてくださいました。
「本当はもっと能登に行きたい。それなのに怖くて近づけないから、悲しいし悔しい。自分の弱いところもわかってる。弱いけど、強がってるだけ」
能登の美しさや素晴らしさを知るふじこさんだからこそ、震災のショックも大きく、ご家族の事情もあり踏み込めないでいるそうです。
能登の人々は、伝統を守る強い信念と、地元をこよなく愛する魅力的な気質を持っています。
一方で『能登の外の人』に対して敏感な一面も見え隠れするようです。
ふじこさんはそんな能登の人々も土地も心から愛し、皆で共生する未来を願っているそうです。
「外のものや人を受け入れて、みんなが無理をしないで一緒になって遊べばいい。そうすれば自分たちだけじゃなくて、皆が嬉しくて楽しい未来にいけるはずだから。」
自身の弱さも認めて進んでいく、しなやかな逞しさをもつふじこさん。
貴重なお時間をご一緒させていただき、とても光栄でした。

